1部の夢かなわず。テネリフェ柴崎岳は悲しみのなか無言で姿を消した (2ページ目)

  • 山本孔一● text by Yamamoto Koichi photo by Aitor Alcalde/Getty Images

 アウェーゴールにより、1点差での敗退ならプリメーラ昇格が決まる。テネリフェにとって値千金の得点だった。試合開始直後はヘタフェサポーターを凌駕する応援を見せながら、2点を先制されて意気消沈していたテネリフェサポーターに喜びと活力を与えたプレーは、水曜日の第1戦同様、日本人MFのラストパスからだった。

 だが、その歓喜は20分後のパチェコのゴールで消し去られた。

 3対1。ホセ・ルイス・マルティー監督は後半開始早々、プレーオフここまでの殊勲者である柴崎を下げてアーロンを投入した。

 交代を告げられた柴崎はサイドラインをまたぐと、かすかに両手を上げ拍手のようなポーズは見せた。だが、その視線は決してテネリフェサポーターには向けられていなかった。こみ上げてくる悔しさを押し殺すかのように、ただただベンチへと続く地面に向けられていた。

 この時点でテネリフェに残された時間は30分以上あった。前半は圧倒的なパフォーマンスを見せていたヘタフェの選手たちの足も止まり、アウェーチームがホームチームの陣地でボールを支配し、パスを繋いでゴールへと迫っていく時間が徐々に増えていった。日本人MFが得意とする高い位置でのつなぐサッカーだ。だが、その時間帯にはすでに背番号20はピッチの中にいなかった。

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