ハンブルガー主将・酒井高徳は名門クラブの大ピンチを救えるか (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Getty Images

 監督交代というカンフル剤が効いていない状況で、与えられた次なる刺激が酒井の主将就任と言える。厳しいチーム事情の中で、かかる期待は大きいのだ。

 主将任命が酒井に伝えられたのはサウジアラビア戦から戻って直後のことだった。ギスドルから「ちょっと待ってて」と言われた酒井は、代表戦直後だっただけに、移動の疲れなど、体調面に関して話があるのかと思ったという。だが指揮官はこんなことを言い出した。

「少しお前にプレッシャーをかけたいと思う」

 なんのことか見当もつかず、ポカンとする酒井にギスドルは続けた。

「でも安心して。ポジティブなことだから」

 酒井は少しホッとしたが、続く言葉に驚くことになる。

「お前の選手としてのあり方をチーム関係者、選手、スタッフから聞いたり、自分で感じたりした。それは今、俺たちに必要なものだと思う。お前をキャプテンにしたいと思う」

 日々の練習で手を抜かず、周囲を鼓舞し、常に明るく前向きな酒井を主将にしたい、というわけだ。確かに酒井は、例えば他の日本人選手たちと比べても、一線を画すレベルで明るく前向きだ。ドルトムント戦で2?5と大差で敗れても、「爪痕は残せた」と言えるようなメンタリティを持つ。単に気が強いというわけではなく、たとえわずかなものでも光明や美点を見出せるタイプなのだ。

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