イブラヒモビッチを虜にした凄腕代理人の「交渉術」と「予知能力」 (7ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ネドベドはイブラヒモビッチに「自分が持っているものに気づいていない」と言ったという。イブラヒモビッチは、もともと備えていた才能にチェコ流の勤勉さを併せ持つようになった。

 15年にわたってヨーロッパ中を巡ったイブラヒモビッチの冒険は、ライオラの才能の一端を示している。それは移籍市場を読む目だ。「偉そうに聞こえるだろうが、私にはフットボールの世界で起こることが、すべて先に見えていた」と、ライオラは言う。

 2006年には、モッジがユベントスの試合を担当する審判に電話して、買収や脅迫を行なっていたことが明るみに出た。ライオラは、これでユベントスは大きな痛手をこうむるだろうと思った。ユベントスに対するセリエBへの降格処分が決まるずっと前に、ライオラはイブラヒモビッチをインテルに移籍させた。

 2009年には、イブラヒモビッチをバルセロナに移籍させた。しかし監督のジョゼップ・グアルディオラが彼を使わないことが増え、この移籍は成功とは言えなかった。グアルディオラの名前が出ると、今もライオラはほとんど反射的に悪態をついてしまう(「臆病者」「腰抜け」など)。彼はすぐにイブラヒモビッチをACミランに移籍させた。

 2012年、ライオラはイブラヒモビッチをイタリアから連れ出した。「彼はまったく行きたがっていなかった。しかし私はミラン側に『今の給料の水準は、もう保てなくなる』とずっと言っていた」

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