連続スタメンのエイバル乾貴士。積極プレーでファンの心を鷲づかみ (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 ミックスゾーンに姿を見せた乾は、イプルアのスタンドの暖かさに心から感謝した。この試合、乾は得点に絡んだわけではない。本人はそれについていつも通りに反省の言葉を口にし、「チームの力になるためにもっと成長しなければいけない」と、さらに上を求めていた。

 それでも交代時のオベーションは、イプルアに集ったエイバルのサポーターが乾のパフォーマンスに満足していることの証明だ。

 序盤は試合自体が停滞したため、なかなかボールに触ることができなかったが、時計の針が30分を超えたあたりから、背番号8番は恐れることなく縦への突破を仕掛けるようになった。後半開始直後には通らなかったものの前線のセルジ・エンリッチにスルーパスを出し、さらに相手GKのクリアミスを奪いシュートを狙うなど、どん欲にゴールを目指していた。

 その戦う姿勢は見ているものにもしっかりと伝わっていたのだろう。記者席の前に座った中年の女性サポーターは、乾がボールを持つたびに「アニモ(頑張れ)・タカシ!」とまるで自分の子どもを応援するかのように声を上げた。乾のプレーがうまくいけば喜び、失敗すればがくりと首をたれる。そのプレーに一喜一憂していた。

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