スペインの怪。ビジャレアル監督はなぜ「八百長」でクビになったのか (4ページ目)
ともあれ、「愛するクラブを守りたい」という強い想いの代償は高くついた。
郷土愛は少なからず、誰にでもあるものだろう。しかしスペイン、リーガエスパニョーラにおけるそれは格別と言える。
スペインは複合民族国家で、マドリードを中心にしたカスティージャ地方、バルセロナを中心にしたカタルーニャ地方、ビルバオ、サンセバスチャンなどのバスク地方、ラ・コルーニャ、ビーゴなどがあるガリシア地方は、それぞれ固有の言語を持ち、文化も異なる。アンダルシア地方は同じスペイン語でも訛りがきつく、文化的には異色と言えるだろう。
面白いことに、アンダルシアこそが世界的にはスペインそのものとして認識されている。スペインの代名詞であるフラメンコ、闘牛、ガスパチョ、シエスタなどの文化的特徴はすべてアンダルシアに由来。例えばバスクでフラメンコを見る場所を探すなら、東京の方がずっと簡単だろう。日本人がスペインからイメージする風景は、たいていアンダルシアにある。
話が少しそれたが、同じ国内でも異郷で生きていると、故郷に強いノスタルジーを覚えてしまう。そして監督という立場になると、「郷里へ恩返しを」という気持ちが少なからず働く。結果、補強面でも同郷の選手を獲得するケースは多い。私情を挟むな、という意見もあるが、多くの時間を過ごした土地との結びつきは、日本人が考えている以上に強いのだ。
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