優勢なのに負けたドイツ。サッカーはうまいがゲルマン魂が足りない (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 両者の力は、バイエルンとアトレティコ以上に差の開いた関係に見えた。

 バスティアン・シュバインシュタイガーがハンドの反則を犯した前半のロスタイムの出来事は、そうした意味で大事件に相当した。何の前触れも脈絡もなく、PK判定が下され、フランスは労せずして先制した。

 PKを蹴ったグリーズマンと、読みが外れボールの行方を呆然と見送るノイアー。昨季のCL準々決勝を想起したのはこの瞬間である。

大男に俊敏な小兵が向かう様は、弁慶と牛若丸さながらだった。痛快劇に最も相応しいサッカー選手。きな臭い匂いを漂わせる選手。グリーズマンなしのフランスは、いまや考えられない。彼がいなかったら、フランスはもっと早く敗退していた可能性が高い。

  とはいえ、監督のディディエ・デシャンが、当初からグリーズマンに全幅の信頼を寄せていたわけではない。2トップを形成するもう一人のオリビエ・ジルーと の関係でいえば、開幕戦時の評価は50対50。さらに2戦目(対アルバニア戦)では、スタメン落ちさえしていた。その評価はそう高いようには見えなかっ た。

 現在の欧州クラブサッカーシーンで、グリーズマンは最も旬な選手である。ここ1~2年で、バルセロナの3人(リオネル・メッシ、ルイ ス・スアレス、ネイマール)と、レアル・マドリードの3人(クリスティアーノ・ロナウド、ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ)に迫る選手に急上昇した。

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