熱烈アーセナルファンの英国人作家がつづった「レスター賛歌」 (3ページ目)

  • コリン・ジョイス●文 text by Colin Joyce photo by Getty Images

 そんな偉業をなし遂げたクラブは、ふつうなら (1)流れを変えた監督を留任させ、(2)降格しそうな状況に再び陥らないよう新戦力の獲得に投資する。

 ところが、レスターは監督を代えた。しかも現代のサッカー界の基準からいえば、使っている金は非常に少ない。

 とても大まかに言って、今どき「まとも」な選手を買おうとすれば1200万ポンド(約20億円)はかかる。いいストライカーなら、3000万ポンド(約50億円)はかかる。「超一流」の選手となると、最近では値段のつけようがなくなってきた。レアル・マドリードがガレス・ベイルを獲得するために支払った移籍金は、推定で8600万ポンド(約145億円)前後とされる。

 先日レスターが2位のチームを破ったときの先発メンバーは、11人合わせて2300万ポンド(約39億円)もかかっていない。先発選手で移籍金がいちばん高かったのは、推定700万ポンド(約12億円)の岡崎慎司だと思う。

 レスターが破った相手はマンチェスター・シティだ。スコアは3-1、アウェーの試合だった。マンチェスター・シティの11人には、レスターの10倍以上の金が投じられている。

 この試合の前まで人々は、いずれレスターが順位を下げるときが必ず来ると思っていた。

 元イングランド代表主将で、現在はイギリスで最も人気の高いサッカー番組のホストをつとめるガリー・リネカーは、シーズンが開幕した週末にレスターが快勝したあと、愉快なジョークを言った。「レスターが首位です」。どこが面白いかといえば、レスターに在籍していたリネカーは、こんなことを言うチャンスは二度と来ないと思っていたのだ。

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