EURO開催にも懸念。サッカーがテロリストの標的になる理由 (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 アルジェリアのGIAは、2000年の欧州選手権でもテロをくわだてていた。フランスの情報当局は、アルジェリア人のアデル・メチャト(1998年のワールドカップ襲撃計画に加わったために服役していた)が、刑務所からオランダのどこかに電話をかけ、オランダとベルギーが共催するこの大会でテロを計画していたことを察知した。

 2004年の欧州選手権が開幕する直前には、オランダ国籍のイスラム教徒3人が開催国のポルトガルで逮捕された。ジョゼ・マヌエル・バローゾ首相(当時)をはじめとするポルトガルの要人の殺害を計画していたとされている。ポルトガルは彼らを強制送還したが、この一件はほとんど注目されなかった。

 11月13日のスタッド・ドゥ・フランスで、僕たちは警備陣に守られた。試合が始まって15分が過ぎたとき、チケットを持った男がスタジアムに入ろうとした。警備員が調べたところ、男が自爆ベストを着ているのを見つけた。そのときすでに、男はベストを起動させていた。男の仲間ふたりはスタッド・ド・フランスの外で自爆し、巻き添えになった市民は「わずか」ひとりだったという(自爆ベストはカラシニコフ銃より扱いが難しいらしい)。

 テロ組織IS(自称イスラム国)は、金曜夜の「テロリスト映画」をドラマチックに始めようとしていた。スタジアムで大殺戮を開始し、出入り口に殺到する観客が将棋倒しになる様子を、プライムタイムのテレビに生中継させようとしたのだが、計画は現実のものにはならなかった。

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