2014.07.10

アルゼンチン決勝進出。明暗分けたマスチェラーノの1プレイ

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 だが、アルゼンチンにも押し切る力はない。これまでの戦いを見ても、褒められた試合は1試合もなかった。準決勝まで勝ち上がったことが不思議なほどだった。相手が名前負けしてくれた。勝因をひと言でいえばそれになる。

 何といってもメッシが酷いのだ。この試合でも時間の経過とともに、動きの量はガタ落ちする。最近の原稿に「メッシの位置が下がりすぎ」と書いた記憶があるが、「下がりすぎ」というより、「動かない」といった方が正確だ。相手ゴールにボールが近づけば、そのポジションは低くなり、自軍ゴールにボールが近づけば、ポジションは高くなる。攻撃にも、守備にも積極的に関わろうとしないのだ。

 ボールの動きに反応し、ポジションを修正しようなどとはまずしない。ずっと歩いている。大袈裟ではない。プレイに関わろうとするのは、ボールが近くに来た時だけだ。ここまで動かない選手(動けない選手)を見ることは珍しい。

 3人のメンバー交替枠を使い切ったあとに、ケガをした選手のようである。いったいどうしたというのか。

 もしこれでどこもケガをしていないのであれば、僕がチームメイトならメッシに文句を言いにいくだろう。胸ぐらをつかんで、殴っているかもしれない。他のアルゼンチン選手がそうしないところを見ると、何か事情があるに違いない。アルゼンチンはまさに10人で戦っているかのようだった。

 前半、アルゼンチンに傾いていた流れも後半に入ると一変。オランダが、ボール支配率で上回るようになった。ボール支配率で上回れるような布陣ではないにもかかわらず。

 メッシ以外のアルゼンチンの選手が、僕の目にはかなり不憫に見えた。王様を必死で助ける労働者。彼らの仕事量は普通より10%増しだった。