12年間、ドイツとブラジルはどこで差がついたのか

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 ブラジルのここまでの戦いぶりを見る限り、いつ負けていてもおかしくはなかった。薄氷を踏む思いとは、まさにこのことだった。

 だから、負けたこと自体に特段の驚きはない。だが、まさかこれほどの大差でその瞬間を迎えようとは......。

 ワールドカップ準決勝、ブラジルは7-1という信じられないスコアでドイツに敗れた。1950年大会に続き、地元開催の大会で優勝を逃したブラジルにとっては、64年前の"マラカナンの悲劇"(1950年のW杯ブラジル大会でブラジルがウルグアイに敗戦して優勝を逃した)に続く、"ベロオリゾンテの惨劇"である。

大量7得点でブラジルに圧勝したドイツ大量7得点でブラジルに圧勝したドイツ「試合の立ち上がり、ブラジルは判断に少し迷いがあるようだった。我々はそこを突くことで優位に立った」

 ドイツのMFクロースがそう振り返ったように、試合開始からわずか11分、右コーナーキックからFWミュラーの先制ゴールが決まると、「あとは次々にゴールが入った」(クロース)。

 先に失点したことで焦るブラジルは、縦へ急ぐばかりで効果的なチャンスをつくれない。ブラジルボールになったときに起こる地元の大歓声が、選手の動きを後押しするよりも攻撃を急がせる結果になっていた。

「ブラジルは失点したことで混乱し、いつもの組織を失っていた」とは、ドイツのヨアヒム・レーヴ監督。そして、ブラジルは"魔の6分間"を迎える。

 23分、クローゼのゴールで追加点が決まると、ブラジルディフェンスはまったく立て直しが利かないまま、24、26分にクロース、29分にはケディラにゴールを許す。前半なかばにして、スコアは絶望的な5-0。この6分間で勝負は決した。

 5万8千人もの観衆で埋まったほぼ黄色一色のスタンドを、わずかに白く染めていたドイツサポーター。その数は全体の1割にも満たなかっただろう。しかし、5点目のゴールが決まって以降の約60分間、スタンドにはドイツサポーターの歌声ばかりが響いた。クロースは言う。

「僕が関わったドイツ代表としては、最高のチームパフォーマンスだった」

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