ベストゲームはアーセナル戦。香川真司の今季を振り返る (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 モイーズ前監督が香川を起用しない理由に挙げていたのは「コンディション不良」。つまり、コンフェデ杯参加によるオフのずれ込みと、調整開始の遅れ、そしてチーム始動から合流できていないことによるフィット不足だった。新監督の就任というタイミングで「つかみ」に失敗したことは、今季、香川が苦戦する大きな原因となった。

 国内リーグで起用されない代わりに、香川はCLで調子を上げていくことになる。プレミア4戦不出場の後、CLグループリーグ初戦のレバークーゼン戦で先発、今季初めての快勝に貢献した。とはいえ、その後すぐに活躍の場が用意されたわけではなく、ベンチを温めたり、途中交代が続いた。初めてのフル出場は10月23日のCLソシエダ戦だった。開幕から2ヵ月強が経過してようやくのフル出場だったことに、モイーズからの評価が透けて見えた。

 もっともマンUほどのビッグクラブになると、一握りの選手以外は入れ替えながら戦って行くのが常ではある。今季に関していうと、一握りの選手とはルーニー、ファン・ペルシー、そしてGKデ・ヘアくらいだった。常時出場する選手には、毎試合確実に結果を出すことが求められるが、そんな期待に応えられる選手の数自体が少なかった。エルナンデス(メキシコ)やナニ(ポルトガル)といった代表クラスの選手が、香川のほうがまだ良かったと言えるほどの扱いを受けていたことも考慮に入れる必要はある。

 香川にとって最良の試合となったのは11月10日、ホームでのアーセナル戦だろう。CLもしくは格下との試合でしか起用されてこなかった香川が、初めてプレミアのビッグマッチで先発起用された。結果は今季数少ない1-0での手堅い勝利であり、今季のベスト マッチに挙げたい一戦となった。

 この試合の香川はルーニー、ファン・ペルシーと揃ってプレイしたこともあり、パスが冴えた。一方で香川に求められる得点やアシスト、それにつながるペナルティエリア内への突破、ボールの受け手としての動きにはまだまだ物足りなさを感じさせた。あくまで前線を操るプレイに終始した。

 その流れで迎えた11月27日、アウェーでのCLレバークーゼン戦ではフル出場を果たし、5-0の勝利に貢献している。だが、香川を知るドイツ人記者からの評価は低く「調子が上がっているようではあるが、ドルトムント時代ほどではないね」との声が大半を占めた。明らかにゴールへ向かうときの怖さが薄れている点では同意せざるを得なかった。

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