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CL準決勝は両者譲らず。唯一の勝者はF・トーレスだった (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi

「今までアトレティコは相手チームにフラストレーションを溜めさせていたが、今日は自分たちがアトレティコにフラストレーションを溜めさせた」と、試合後の会見でモウリーニョは語った、守護神チェフ、そしてキャプテンのジョン・テリーと、チームの守備の要である2人が負傷で交代した試合の流れの中で、相手に得点をさせずスタンフォード・ブリッジに帰還できることは大きな収穫であり、満足感につながるものだろう。

 そしてチェルシーにはもう一人、この試合で大きな満足感を得た選手がいる。それがアトレティコ・マドリードで育ったフェルナンド・トーレスだ。

 7年ぶりのビセンテ・カルデロンで彼を待っていたのは暖かい歓迎だった。試合中こそボールを持てばブーイングが飛び交ったが、試合前のメンバー発表でフェルナンド・トーレスの名前が読み上げられると、スタンドから大きな拍手が送られた。

 試合終了後には、センターサークルに残った元アイドルに対して、その名前がまるで自チームの選手のように歌われた。そんなコールに応えるように、トーレスは両手を頭の上で叩きながら、ロッカールームへと戻っていった。

 試合後、メディアに応対したトーレスは「7年ぶりに戻ってきたわけだから、自分にとって特別という言葉以上のものは見つからない。しかもCL準決勝という舞台。アトレティコのことを考えてもこれ以上のものはない。試合は戦うもの。そう自分はアトレティコで教えられた。だけど、試合前や試合後は本当に感動的なものだったし、決して忘れることはないだろう。入場の時の気持ちは言葉では説明できない。アトレティコはいつも、自分が与えてきたもの以上のものを与えてくれる」と、古巣の歓迎ぶりを喜び、その顔にはおのずと笑顔が浮かんでいた。そして続けた。

「アトレティコは夢を追い続けることを自分に教えてくれた。今の自分の夢は決勝に立つこと。負けるわけにはいかない。勝たないといけない」

 トーレスにとってアトレティコとチェルシー、どちらが決勝に進んでも喜ばしいものだろう。だが、アトレティコ時代は赤いほっぺたがトレードマークだったストライカーに、ニーニョ(少年)と呼ばれたころの幼い面影はない。チェルシーと契約を結んだプロの選手として、スタンフォードで最愛のクラブの快進撃をストップさせることを誓い、愛するスタジアムを後にした。


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