多国籍チームを率いる方法を身につけたアンチェロッティ

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】素顔のカルロ・アンチェロッティ(2)

 2005年、イスタンブールで行なわれた忘れられない決勝で、カルロ・アンチェロッティはチャンピオンズリーグのトロフィーをリバプールに奪われた。ACミランは前半を3-0でリードしていたが、後半に入って3-3に追い着かれ、PK戦で敗れてしまう。

 しかし試合後にはホテルのバーに、リラックスした面持ちで知人とイスタンブールの観光名所について明るく話すアンチェロッティの姿があった。彼は自分の仕事を終え、もうオフの時間だった。当時を振り返ってアンチェロッティは言う。「チームは勝つためにやれることをすべてやった。だから私は怒るわけにもいかなかった。運命だったのだと思う」。そして、こうつけ加えた。「フットボールは、世界のそれほど重要ではないもののなかで、最も重要なものだ」

試合後にクリスティアーノ・ロナウドをねぎらうアンチェロッティ(photo by Getty Images)試合後にクリスティアーノ・ロナウドをねぎらうアンチェロッティ(photo by Getty Images) イスタンブールの試合について後悔はないと、アンチェロッティは言う。「6分の間に3点取られたら、いったいどうすればいい? 何かを変えるのは不可能だ。時間がない。私はそれまで800試合で監督を務めていた。そのなかで自分のチームが本当に、本当によくやった2試合をあげろと言われたら、このゲームはその1試合だ。もう1試合は、マンチェスター・ユナイテッドと戦った2007年のチャンピオンズリーグ準決勝だ」

 2007年に決勝進出を決めた後、ミランの選手たちはもう一方の準決勝を見るためトレーニング場の大画面の前に集まり、チェルシーと戦うリバプールを応援した。「私たちはチェルシーにやじを飛ばしつづけた」と、アンチェロッティは自伝に書いている。「リバプールの帽子や、おもちゃのラッパを出してきた者もいた」

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