CSKAでの最終戦。本田圭佑、「失敗」の4年を語る (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • 千葉格●写真 photo by Chiba Itaru

 そして65分、右サイドから本田がクロスをあげるとファーサイドでムサが合わせてCSKAが先制に成功する。4年間在籍したクラブでの最終戦、自ら流れを引き寄せて得点をアシストしてみせるあたりに本田の凄みを感じた。

 しかし、先制した直後にジャゴエフが退場になると、試合の流れは一気に相手に傾く。10人になったCSKAは相手に押し込まれ、ショートコーナーから同点に追い付かれると、試合終了間際に勝ち越しを許し1-2で敗れた。

 2点目を失った後、本田はイエローカードをもらうまで執拗に審判に抗議を続けた。それでも気持ちは収まらず、試合再開のホイッスルが鳴っても副審を睨みつけ、試合終了の笛が鳴ると主審に詰め寄った。それほど勝利への想いが強かったのかもしれない。

 だが、この日の本田には2つの顔が見え隠れしていたのも事実だ。不必要なヒールパスをし、相手を追いかけるべき場面で緩慢な守備をするその姿は、攻撃時に高いクオリティを発揮する本田の姿とは似ても似つかなかった。だが、有終の美を飾れないのも「本田らしい」のかもしれない。

「CSKAで記憶に残っている出来事といえば、何もかも、いい意味で失敗が多かったなと感じています。それが自分にとって自慢のできる失敗ばかりだったし、将来、これだけ失敗した人もいないということを自慢に、自分はさらに成長していけると思っている。次のクラブでもたくさん失敗するでしょうけど、自分にとって失敗というのは大きな成長と紙一重と言うか、成長するためのチャレンジなのかなと思います。」

 この4年間、本田はロシアで数多くの失敗をしてきた。それは本田が挑戦してきたことの証でもある。その失敗を糧に本田はここまで成長してきた。挑戦しなければ、記憶に残るような失敗をすることはなかっただろう。そして何かを得ることもなかっただろう。挑戦したからこそ失敗し、その対価として何かを得ることができた。

 本田の挑戦は舞台を移すことになる。その場所で本田はどんな失敗をするのだろうか。それを糧に本田がどれくらい成長していけるのかが楽しみでならない。

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