今季ドイツで最も紙面を賑わせた日本人選手は?

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

今シーズン、豊富な運動量でスタメンに定着したシュツットガルトの酒井高徳今シーズン、豊富な運動量でスタメンに定着したシュツットガルトの酒井高徳【2012-13シーズン欧州組総括@ドイツ編】

 2012-13シーズン、ブンデスリーガ1部では11人もの日本人選手がピッチに立った。その中で、誰が最もドイツで話題になっていたのか、今シーズンを振り返ってみる。

 まず、移籍に関してメディアに多く露出していたのは、シュツットガルトの酒井高徳だ。ウワサされている移籍先は、イタリア・セリエAのクラブ。ヨーロッパリーグ決勝トーナメント2回戦でラツィオと対戦したときには、その潜在能力にスポットが当てられ、イタリアのスポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』は、「ローマが酒井高徳に関心を示している」と報じた。また、ミランやユベントスも酒井高徳をリストアップ済みと報じており、22歳の有望株に向けられた来季のウワサは尽きない。

 ただ、強烈なインパクトを残した昨季に比べ、今季は良くも悪くも安定したという印象が強い。また、リーグ戦終盤での失態も目に付いた。第32節グロイター・フュルト戦ではオウンゴールを献上し、第33節は累積警告で出場停止、第34節は今季リーグ戦初の途中交代。地元紙『シュツットガルターザイトゥング』は、「守備でミスを犯し、攻撃では立ち往生した」と厳しい評価を下していた。チームはリーグ12位でシーズンを終えたため、終盤戦での低評価が来季にどのような影響を及ぼすのか。

 一方、昨季に引き続いて今季も注目を集めていたのは、シャルケの内田篤人だろう。今季、シャルケはリーグ4位でフィニッシュ。内田自身は右太ももの肉離れで3度の離脱を経験したにもかかわらず、リーグ戦24試合に出場した。今季は、冬の移籍市場で『キッカー』誌など主要メディアが放出候補と報じたり、試合毎の各紙評価も総じて良くなかった。しかし、最後まで起用され続けたのは、チーム内における内田の信頼度が高いからだろう。

 また今季は、内田人気にドイツ人が気づいた年でもあった。シャルケの公式有料動画サイトで、試合後の取材風景がほぼ毎試合、配信されるようになったのである。動画スタッフは、「内田が話すと日本のファンが喜ぶ」と語り、日本からのアクセスが圧倒的な数字を示しているという。そして4月には、内田の誕生日に多くのファンレターが届いたことがマッチデープログラムに大きく取り上げられた。さらに、ブンデスリーガのCMに他チームの代表クラスの選手と出演したり、ブンデス公式サイトの英語版でフィリップ・ラーム(バイエルン)をしのぐ得票数でベストイレブンに選ばれたり......。これには内田本人も奇妙な感を抱いており、「ラームよりも高得点って......。おかしいって思う人のほうが多いでしょ?」とコメント。このようにピッチ以外でもメディアを賑わせてくれたのが、今季の内田だ。しかし、チャンピオンズリーグ(CL)でベスト16進出を果たし、最終節で勝って来季のCL出場枠を得るなど、日本人ブンデスリーガーの中で最高の結果を残したことを忘れてはならない。

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