CL準決勝進出も、「メッシ依存症」が浮き彫りになったバルセロナ (2ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michiko photo by Rafa Huerta

 スタメンには、シャビ、ジョルディ・アルバ、アドリアーノ、ペドロなど負傷あがりの選手が並んだ。スタメン出場するかどうかが注目されていたメッシは、結局、ベンチスタートだった。

 試合前日から、メッシ、ペドロ、アドリアーノとも、チームメートとともに練習に参加していたが、招集リストに入っても、試合出場については、担当医からのOKが出ていなかった。実際、試合に出ることは決まったが、直前まで担当医からの了承が出なかった。

 バルセロナはこの試合、特にディフェンス面が不安視されていた。それは、主力センターバックのプジョル、さらにマスチェラーノの負傷で、ピケのパートナーを務める選手が残っていないためだった。ティト・ビラノバ監督は苦肉の策として、経験の浅い若いバルトラよりも、スピードと経験のあるアドリアーノをピケの相棒にする選択をした。しかし、アドリアーノは本来サイドを務めることが多い選手である。

 そのDFラインの前には、ブスケッツ、シャビ、イニエスタ、セスクとスペイン代表の黄金のカルテットを置いたが、この試合に限って、「世界最強」と謡われる4人も機能しなかった。ブスケッツは、いつものようにボールを奪うことができず、イニエスタまでもがボールを失い、シャビはディフェンスラインを上げてきたPSGのカウンターに追いつけず、セスクもシュート精度を欠いた。

 また、「カンプノウでこんな戦い方をしてくるクラブは、そうそうない」とピケが感嘆するほど、PSGは高い位置からのプレスと鋭いカウンターで攻めてきた。そして後半5分、パストーレがゴールを決めてPSGが先制する。

 先週末のリーグ戦では、メッシの代役を見事に務めたセスクも、このCL準々決勝第2戦では精彩を欠き、結局、後半17分にメッシと交代して自分のポジションを譲渡し、ベンチに下がった。

 この試合でメッシはゴールを決めたわけではなかったが、その「威力」は明らかだった。スタンドからの大歓声を受けてピッチに立ったメッシは、周囲を鼓舞し、「彼がいれば大丈夫だ」という自信あふれる空気がチーム内に伝染していった。

 メッシはそれまでバルサの選手がドリブルで切り込めなかったエリアに侵入してスペースを生み出し、ゴールへの道を照らし出した。太陽の光を受けて輝く月のごとく、イニエスタを始めとする周囲の選手も、本来の輝きを取り戻した。

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