2012.12.26

【フランス】ドメネクが代表選手たちの心をつかめなかった理由

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

南アW杯、南アフリカ戦でリベリーに指示を与えるドメネク。ウルグアイに引き分け、メキシコに敗れたフランスは、内紛が伝えられる中でこの一戦を迎えた。試合は1-2で敗れ、フランスの敗退が決まった photo by GettyImages【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】レイモン・ドメネクとフランス代表(後編)

 フランス代表選手同士の摩擦もあった。ドメネクが2010年ワールドカップにナスリを連れて行かなかったのは、彼がリベリーと仲が悪かったからだ。ギャラスもナスリが嫌いだった。マルダ、ヨアン・グルキュフ、アンリ、パトリック・ビエラは、みんなリベリーと衝突した。選手たちはグルキュフにパスを出さなかった……。この手の話は延々と続く。

 フランス代表のこの世代にまとまりが欠けているのは確かだろう。世界のフットボールで最も難しい仕事はイングランド代表監督だとよく言われる。それでも、イングランドの選手たちはたいてい従順だ。メディアやファンがそうすることを求める。昔からイングランドのフットボール選手の手本は兵士だからだ。フランスではそうはいかない。

 だとしても、ドメネクの抱えていた不満が当然というわけではない。近ごろの若者はなっていないと嘆くだけでは、フットボールの指導者は務まらない。若者と働くことが仕事だからだ。アレックス・ファーガソンやフース・ヒディンクなど偉大な監督は、ほとんど誰とでも仕事ができる(ファーガソンはカントナとも一緒にやれた)。

 それにドメネクが批判している選手たちは、クラブではきちんとやっている。もちろんクラブの監督は選手の年俸やキャリアに影響力があるから、代表監督より選手をコントロールしやすいだろう。だが代表監督は、栄誉を与えてやれる。ワールドカップの優勝はチャンピオンズリーグのタイトルよりも上だし、それは選手たちも知っている。しかも莫大な金をもらっているからといって、すべての選手が甘やかされているわけではない。2010年のワールドカップに出場した32チームのうち、ストを行なったのは1チームだけだ。

 問題はたいていの場合、ドメネクにある。ひとつには、彼がフランス代表に受け継がれてきた無益な協調の文化にはまっているためだ。「恥辱のバス」事件のとき、ドメネクはストに入った選手たちに「母国の栄誉」や「フットボールの栄光」を説いた。選手たちの心にはまったく響かなかった。