【イングランド】マンU逆転勝利も、香川真司に訪れた試練 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Akira Suemori/Kaz Photography

 また、チーム全体が攻撃でスピードアップしたいときに、香川とのリズムが合わずチャンスにならないことも。例えば前半43分には、香川が右サイドでボールを持ち、ゴール前にはファン・ペルシーらが入るのだが、そのスピードと香川のパスのスピードが合わず、チャンスにならなかった。

 呼吸が合わないために、香川へのパスもそう多くは入らない。相手の出来が良かったこともあるし、香川だけでなくボランチの出来も決して良くなかったこともあるが、香川自身のプレイも徐々に苦しいものになり、交代につながった。

 チームはこの時点で1-2とリードを許していた。だが香川が退いたのと同時に入ったスコールズが、中盤に落ち着きを取り戻す。87分に同点ゴールを、そしてロスタイムに入ってから勝ち越し点を、ともにファン・ペルシーが決め、ハットトリックを達成する。ファン・ペルシーのゴール前での迫力と得点力は圧巻だった。

 68分にはファン・ペルシーのPKが相手GKに止められており、この時点で試合はサウサンプトンが勝つ流れかにも思えた。だが、決して良くない内容の中でも、セットプレイも含めて一気に逆転するあたりが名門の強さなのだろうか。

 気になるのは試合後のファン・ペルシーのコメントだ。

「誰もがハードワークしているが、スコールズに感謝を言いたい。彼が入ってから全てが動き出した」

 確かに試合の終盤になって、マンチェスター・ユナイテッドは流れを一気に引き戻した。その立役者はスコールズだ。だがそれは、それまでの香川との関係が今ひとつだったことの裏返しでもある。次戦で香川に先発のチャンスが巡ってくるかどうか。香川にとってみれば、味方と理解しあうためにも時間が必要だ。この日の救いは、内容はともかく勝利を収めたことだろう。勝っている限り、起用され続ける可能性は残るはずだ。

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