【イングランド】「自信はある」。香川真司を待ち受ける超ハイレベルのレギュラー争い (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images


 ただひたすら必死でプレイしている、のではない。自分がボールに触れていないときでも周囲に指示を出し、どこで自分が絡めば効果的かを考えながらプレイできる余裕がある。それゆえの「風格」なのだろう。

「(日本語は通じないので)英語やジェスチャーでコミュニケーションをとるしかないが、サッカーの感覚というのは、やっぱりうまい選手が多い分、持っているものに近いものがある。だから、違和感なくできているのかな、と思う」

 実際、プレシーズンマッチでは、若手主体で臨んだ前半3試合よりも、EURO2012に出場していた主力組が合流した後半3試合のほうが、むしろ香川が目立っているようにさえ見えた。香川自身、主力合流後の初戦(8月5日のバレレンガ戦)の後に、こう話している。

「他の選手のよさを出しながら、自分のよさを生かしていければ、よりゴールを取れる雰囲気があるのかな、と。今日の試合を見ても分かるように、チャンスはいっぱいあるし、サイドからいっぱい崩せているんで。あとは、ゴール前でいい位置を取って、コンビネーションで行けたら、(ゴール)チャンスに関われると思う」

 事前には、マンUとドルトムントではフォーメーションが異なることを不安視する声もあった。

 確かにマンUは、4-4-2がベースではあるが、ルーニーとウェルベックが2トップを組む場合でも、どちらかが下がって縦の関係を作ることが多い。そのため、香川がトップ下に入った場合でも、2トップが流動的に前後を入れ替わるか、前後の選手が固定されるか、だけの違いであり、戦い方が大きく変わるわけではない。香川自身、「自分の特徴をプレイで出すだけで、プレイスタイルを変える必要はない。お互いのプレイスタイルを生かしながら、連係を高めていけばいい」と話している。

 少なくとも、プレシーズンマッチを見る限り、フォーメーション的な心配はなさそうだ。事実、ナニやバレンシアとの横の連係は抜群だったし、ルーニーやエルナンデスとの縦の連係も良好だった。

 しかし、現状においては、香川はマンUの主力としてプレイする資質のあるひとりであることを示したに過ぎない。すなわち、チーム内でのポジション争いを勝ち抜かなければ、プレミアリーグやUEFAチャンピオンズリーグといった、公式戦のピッチに立つことはできないのだ。

 しかも、エルナンデス(メキシコ代表)、ルーニー、ウェルベック(ともにイングランド代表)と、前線にはすでに豪華メンバーが揃っていたにもかかわらず、先日、アーセナルのエースストライカーにして、昨季のプレミアリーグ得点王でもあるファンペルシー(オランダ代表)の移籍加入が決定。さらなる競争の激化は必至である。香川にとっては、ドルトムント時代とは比べものにならないほど、タフなシーズンになりそうだ。

 それでも香川は、「自分自身、絶対にできるっていうすごく強い自信や手応えは日々感じている」と力強い。マンチェスター・ユナイテッドで迎える初めてのシーズンは、現地時間8月20日に開幕である。

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