【EURO】総括!実力的にスペインと遜色なかったドイツ、ポルトガル (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 原悦生●写真 photo by Hara Etsuo

 しかし、表記上では2トップの一角を占めるカッサーノは、決勝戦ではあまり左右に流れることができなかった。左右に流れるという行為には走力と体力が求められる。中2日、間もなく30歳を迎えるカッサーノに、これは酷な注文だった。前半終了とともに彼がベンチに下がった瞬間、イタリアの勝利は望みにくいものになっていた。

 ユーロの問題は、準決勝の第2戦を戦うチームが、決勝で日程的に極端な不利を被る点にある。この点を僕は大会前から指摘してきたが、結果的にはその通りになってしまった恰好だ。というわけで、大会後の印象は正直、いまひとつ晴れないものがある。

 だが、イタリアが中3日なら勝てただろうと言い切ることもできない。それでもスペイン優位は否めなかった。

 むしろもう一度見たいのは、スペイン対ポルトガル戦だ。0-0、延長、PK。終盤、サイドを厚くしたスペインが、ほんのわずか優勢に見えた試合だが、ほぼがっぷり四つ。ポルトガルの善戦を讃えたくなる。グループリーグで敗れたドイツ戦(0-1)にしても内容は互角。今大会で最もよいサッカーをしていたチーム。僕の印象ではそうなる。

 スペインの圧勝で幕を閉じたユーロ2012だが、実力的にはドイツ、ポルトガルもそれに遜色ないレベルにあった。「次回」が期待できるチームだ。だが、それに試合巧者ぶりを発揮したイタリアの4チーム以外は、どれもいまひとつという印象だった。2年前、4年前よりレベルを上げているチームは少なかった。例外はギリシャぐらいだった。

 中でも酷かったのはイングランドだ。ベスト8という成績だけを見ればギリギリ合格だが、内容に目を向けると、他国のことながら心配になる。いい選手がいないのだ。プレミアリーグは現在、スペインリーグと欧州リーグランキングで激しい首位争いを演じているが、代表チームの戦いに目を向けると、その不健全さが際立つ。自国の選手がリーグのレベルアップに貢献しているスペインと、外国人に頼っているプレミア。両者には著しい開きがある。

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