【EURO】狙いが明確なスペインの前に、またも自滅したフランス (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 原悦生●写真 photo by Hara Etsuo

 一方スペインは、初戦のイタリア戦と同じ、セスクを起用したいわばゼロトップシステム。デル・ボスケ監督は「(セスクが)並のフォワードだったら話は違うが、ボールを支配し、そのことによってチャンスを作ろうとした」と認めており、その意図は確実に選手に伝わっていた。もともとの力の差以上に、狙いの定まったスペインをフランスが打ち破るすべはなかった。

 前半からフランスはその急造右サイドを狙われた。デル・ボスケは「(左サイドバックの)アルバが良かった」と言い、ブランは「右サイドを修正しようとしたが、できなかった」と語った。前半19分の先制点はそこをつかれたものだ。

 スタンドからブーイングが起きるほどのゆっくりとしたパス回しからチャンスをうかがい、イニエスタにボールが入ると同時にスピードアップ。アルバは左サイドの裏のスペースへ一気に駆け出し、イニエスタがそこに速いパスを送り込む。アルバはディフェンダーとの攻防の後に中央にクロスを送ると、そこにシャビ・アロンソが飛び込んできた。

「アイコンタクトはできていた。アルバがオープンスペースをうまくつかってクロスを挙げてくれた。完璧なゴールだった」と、この日が代表100試合目の出場だったシャビ・アロンソは味方を称えた。

 後半に入り、ブランはナスリ、メネスらを投入するが、時すでに遅し。1点をリードしたスペインを崩す形は最後まで作り切れず、終了間際にはPKまで与えて、あっさりと敗れ去った。

「もちろんうれしくない。だが、先制点を与えたことで完全に支配されてしまった。あれでは2点をとるのは難しい」と、ブラン監督はお手上げの様子だった。

 スウェーデン戦の前まで23戦連続無敗だったフランスが、わずか1試合の敗戦と、その余波でここまで崩れてしまう。ブラン監督の立て直しが成功したかに見えたが、再生にはまだ時間がかかりそうだ。

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