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【Jリーグ】イニエスタはサッカーの本質を教えてくれた 「バルサの天才少年」の記憶を辿ったクラシコの夜 (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Kei Totsuka

【数年後はバルサの中心選手】

 記者会見が終わり、現地在住の知人と彼の家まで歩く。

「そういえば」と聞かれた。

「アンドレス・イニエスタって知ってますか?」

 僕は探るように答える。

「ええっと......ちょっと前にデビューしたカンテラ出身の選手だったっけ?」

 そうそう、と知人がうなずく。

「さっきの会見で、ファン・ハールが質問されたんですよ。なんで彼を使わなかったんだって」

 当時18歳のイニエスタは、10月にチャンピオンズリーグのクラブ・ブルッヘ戦でトップチームデビューを飾っていた。すでにグループステージ突破を決めていたことで、ファン・ハールは背番号34を着けた少年をスタメンでピッチに送り込んだのだった。

 オランダ人のファン・ハールは、前職のアヤックス監督として、ともに成功を収めた選手を中心に、バルサをオランダ化した。そのチーム作りはカンプ・ノウにアレルギー反応を引き起こし、タイトルを獲りながら批判にさらされていた。

 だが、Bチームから若手選手を昇格させることに積極的だったことは、彼の功績に挙げられるだろう。長く守護神として活躍するビクトル・バルデス、DFのオレゲール・プレサス、そしてイニエスタらをトップチームへ吸い上げた。のちにイタリア代表となるブラジル出身のティアゴ・モッタも、ファン・ハールのもとでトップチームに定着した。

 カンプ・ノウから友人の自宅までは、歩いて20分ほどだ。試合後の夜はできるだけ人通りの多い道を選ぶので、5分ほど遠回りになる。

 友人がファン・ハールの答えを教えてくれる。

「クラシコはどちらのチームにとっても特別な試合だ。選手には大きな重圧がかかる。イニエスタのような若い選手を使うのは簡単ではない、と話していましたけどね」

 それはまあ、そのとおりだろう。

 すでにスペイン代表に定着していた22歳のシャビ・エルナンデス、オランダ代表フィリップ・コクー、ラツィオからレンタル移籍しているスペイン代表ガイスカ・メンディエタ、それにアルゼンチン代表フアン・ロマン・リケルメとティアゴ・モッタが構成した中盤に物足りなさを感じさせる余地がなかったのも事実だ。あくまでも、日本人の感覚ではあるが。

「まあでも、イニエスタは日本の中学生年代から注目されている選手ですからね。数年後には間違いなくバルサの中心選手になっているって、こっちの人はみんな言っていますよ」

 友人の話を聞きながら、僕は記憶のドアをひとつずつ叩いた。イニエスタという名前を、もっと前に聞いたことがあるような気がしていたのだ。さて、いつだったか──。

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