【Jリーグ】原点回帰で9季ぶりの優勝が見えてきた鹿島アントラーズ、鬼木監督が選手に植え付けた「圧倒して勝つ!」 (3ページ目)
【「重要なのはゴール。理想は圧倒して勝つこと」】
鹿島は2023年10月から今年4月まで、実にリーグ27試合もホーム負けなしが続いた。しかし、鬼木監督はどこかチームに根付いていた──2018年のACL制覇あたりからだろうか──負けないことが正義だという保守的なマインドを変えていった。
これまでは、無敗記録をよし、と解釈する監督もいた。だが、敗北を恐れていては勝利をつかめないと、鬼木監督は訴えたのだ。
失点しない戦い方から、ゴールを奪い切る攻撃的なスタイルへ──。
「重要なのはゴール。そのために、いかにボールを早く回収できるか。理想は圧倒して勝つこと」と指揮官は振り切った指針を掲げた。それは選手たちの奥底に眠っていた闘争心を呼び覚ました。
ホームでの無敗記録が27で止まったのは、第9節(4月6日)の京都サンガ戦(3-4)だ。痛恨の一敗ではあったが、鬼木監督は「(マッチアップなど)闘う部分のところばかりを強調し、ボールを動かすところで主導権を握れなくなってしまった」と言った。鹿島が優勝するために必要としていた具体的な要素を知る機会にもなったはずだ。
DF植田は言う。
「昨年までの悔しさも、今年の戦いに生かしていけていると思っています。やはり『負けてはいない......』というところで、満足してしまっていたのかなと。そこで満足せず、勝ちにもっていく考えが、今はみんなにあると思います」
その選手たちが勝利を希求する姿勢は、これまでになく、観る者を魅了するようになった。一段と心を揺さぶるようになった。
ひたむきに、勝利のために全力を尽くす──。
そんな選手たちの姿を、スタジアムに訪れるアントラーズのサポーターは精一杯あと押しする。敗れた時の悔しさ、勝った時の喜び、その感情の揺れ幅は激しく、だからこそ勝利の味も格別になっていると感じる。それは負けなければよし、という考えでは、手に入れられなかった一番の効果なのかもしれない。
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