【Jリーグ】原点回帰で9季ぶりの優勝が見えてきた鹿島アントラーズ、鬼木監督が選手に植え付けた「圧倒して勝つ!」 (2ページ目)
【鹿島はやはり"勝利"に執着すべき集団】
鹿島は近年、新たな領域に到達しようと試行錯誤を繰り返してきた。吉岡宗重前フットボールダイレクター(FD)時代には、レネ・ヴァイラーから、岩政大樹を挟み、ランコ・ポポヴィッチと、ヨーロッパからの監督招へいに2度着手。しかし、いずれも短命政権に終わった。
昨季のポポヴィッチ体制下、選手たちからは練習がとても充実しているという声が聞かれた。だが、成績が低迷した際にも、ポポヴィッチは「楽しむことが大切」と発言。それは勝利を前提に逆算していく鹿島の哲学とは相反するスタンスと言え、結局、解任された。ポポヴィッチが勝利に徹したらどうなるか──クラブはそこに懸けたはずだったが、そのセルビア人指揮官は鹿島のカラーに染まり切れなかった。
ただ、思いきった監督人事を行なったことにより、少なからず新鮮な風が吹き込んだのも事実だった。同時に、選手たちのみならずクラブ全体が、やはり鹿島は何よりも"勝利"に執着する集団であるべきという認識を強めた。
そこにクラブOBで実績のある鬼木監督が就任。昨季終盤にフットボールダイレクターに就任した中田浩二氏が、新指揮官の"復帰"を実現させた形だ。川崎でJ1を4度、ルヴァンカップを1度、天皇杯を2度制している指揮官は、新天地でもゴールと勝利を徹底的に求めた。その先にある理想は"圧倒"だ。
先制しただけで満足するな。2点目を狙っていこう。2点を取れたら3点目を奪いにいけ。そのためにも試合を支配し、圧倒するのだ。クラブのアイデンティティに立ち返るようなメッセージを訴え、選手たちの攻撃的な本能を強く刺激した。
鬼木監督のその理想に、エースの鈴木優磨は共鳴した。
「1点を取ると今までは守りに入る感じがあったけど、『チャンスがあったらいこう』と。決してリスクを取ってまでいけというわけではないですが、鬼さんはたたみ掛けようと言っています。追加点を取りにいくことを求められています。『どんどんいけ』と。そこはみんなで意識できています」
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