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【Jリーグ連載】アカデミー出身者が数多く活躍する東京ヴェルディだが、苦悩の時期も長かった (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

「守備において誰かがサボったら、このチームはJ1で戦えない」
「J1残留は絶対の、最大の、等身大の目標だが、それに満足せずサプライズを起こすんだ」

 これらは2024年、トップチーム監督の城福浩が常に口にしていた言葉だ。その姿勢を貫いた結果が、J1昇格1年目での6位である。

 とはいえ、J1での躍進はわずかに1年前の話だ。その熱がアカデミーに伝わったのは確かだとしても、2023年以前の18年間で、ヴェルディがJ1にいたのはわずかに1年。さかのぼれば、17年もの間、ヴェルディはJ2のクラブだったのである。

 これではトップチームがずっとアカデミーに好影響を与え続けていたとは考えにくく、むしろトップチームが長らくJ2にいたことは、アカデミーの足かせになっていたのではないか。そんな疑問さえ浮かんでくる。

 中村は言葉を選びながら、厳しい現実を明かす。

「ヴェルディが10 年以上J2にいて、徐々に小学生や中学生だったりが......、なかにはうちでやりたいという選手もいますけど、なんて言うんですかね......。

 その年代のトップトップの選手は、(川崎)フロンターレさん、(横浜F・)マリノスさん、FC東京さん、横浜FCさん(のアカデミー)に行くなかで、言い方は悪いですけど、その時点では次のランクの選手にうちに来てもらうようになりました。

(ヴェルディに入ってくる選手は)小学生のときには、それほど突出した力がなくても、うちのジュニアユースやジュニアに入ってきて力をつけるっていう、晩熟型の選手が多かったのは事実かな、と思います」

 クラブに専門のスカウトを置き、有望な素材の獲得に力を注ぐのは、プロの世界だけの話ではない。それはアカデミーでも当たり前に行なわれていることであり、「どこのクラブでも、今は(小学生を対象にした)ジュニアの段階でスカウトを2、3人置いている」とは、中村の弁だ。

「うちはスカウトという役職ではひとりだけですけど、スタッフみんなで協力していろんなところを見に行ったり、それを踏まえて練習会やセレクションをやったりしながら、うちに目を向けてもらう。そういう仕組みになっています」

 そんな争奪戦のなかにあっては、日本のトップリーグに属するJ1クラブのほうが、事を有利に進められるであろうことは想像に難くない。

「選手だったら、より華やかな(J1の)クラブでやりたいっていうのはあると思います。やっぱり(ヴェルディが)声をかけても、どうしても......」

 言いよどむ中村の様子に、かつてはなかった苦労がうかがえた。

(文中敬称略/つづく)

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