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祖母井秀隆が語る日本サッカーに本当に必要なこと「点数化してしまう協会の指導者養成は好きじゃない」 (2ページ目)

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko

 上島はC級ライセンスの持ち主であるが、A級やS級の取得には関心が無いと言う。

「上のライセンスを取りに行こうかとも思ったのですが、それよりも他の勉強をしようと考えたんです。指導者として必要とされるのは、ライセンスではなく人としての知識じゃないかと。ウバさんからも『フィンランドの教育を読んだ方がいい』とか、たくさん本を薦められてそれを読んでいます」

 祖母井は自らもまた新しいものに着手していた。上島とともに小中学生向けのクラブを立ち上げたのである。かつてジェフの育成部長に就任した頃、ジュニアユースは軽視されていた。トップはグラウンド、ユースは人工芝、ジュニアユースは体育館で練習しろと言われ、芝に入ろうとしたら、水をかけられた。これはおかしいと提起して、習志野の秋津のグランドなどを借りて村井慎二、工藤浩平、阿部勇樹、佐藤勇人などを育てていった。

 Jリーグ(ジェフユナイテッド市原、京都サンガF.C.)、そしてフランスリーグ(グルノーブル・フット38)のGMとしてプロの世界で長く仕事をして来た中で、育成世代の重要性を熟知した祖母井が創設したクラブの名前はインゼルユナイテッドという。クラブの理念は「Spiel macht frei(ドイツ語/スポーツは遊びの延長にあり遊びは自由にしてくれる)」というものである。遊びこそ、スポーツの基本。だから淑徳大学が指導しているサッカースクールの名前もスクールではなく、サッカー広場と命名している。

「子どもの成長も長いスパンで見ないといけないのに、保護者のお母さんやお父さんたちが手を下してやってしまう。僕は自分で感じて自分で考えるサッカーを子どもたちに根付かせたいんです」

 祖母井らしいクラブポリシーは「勝ち負けを第一にせず、成長過程を学ぶ体験や多文化の経験を目指す」と提唱している点である。

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