「元日・国立競技場」の天皇杯決勝を捨ててよかったのか 厳しくなるサッカーを取り巻く環境 (2ページ目)
【減っていく地上波の試合中継】
天皇杯決勝が行なわれた元日の国立競技場は、対戦カードにかかわらずほぼ満員に埋まってきた。横浜、埼玉とは、入りが決定的に違った。
お茶の間のファンにも浸透していた。元日の午後、NHKの総合は必ず天皇杯決勝を映し出していた。視聴率はそれほど高くはなかったかもしれないが、元日恒例のイベント、風物詩として定着していた。そんな魅力的なコンテンツを、サッカー界はスパッと切った。大変な勇気である。しかも熟考の末、と言うわけでもなさそうだ。
自分たちの魅力に気がついていないが故の悲劇。それは、ほぼ時を同じくして始まった外苑の杜を一部伐採する再開発事業とも被る。本来、大きな問題としてもっと議論すべきだと筆者は考えるが、何となく流されてしまった感じだ。アイデンティティを簡単に捨てすぎている印象である。
NHK総合で放送されるJリーグの試合はいまや年に数試合。民放の地上波に至っては限りなくゼロに近い。観戦の間口は狭まるばかりだ。有料配信サービスと契約せずに、サッカーを満足に視聴することはできなくなってきた。だがその契約者の数はけっして多くない。
これまでならその影響を受けるのはJリーグに限られていた。ところが、昨年は日本代表戦も例外ではなくなった。昨年始まった2026年W杯アジア最終予選。ホーム戦は地上波で中継されるがアウェー戦はなし。DAZN頼みになっている。そのDAZNにしても、基本的に実況と解説者が日本で音声を入れるオフチューブのスタイルだ。現地からの実況ではなく、質の高い試合中継が行なわれているというわけではない。
その一方で、日本代表はあと1勝でW杯本大会出場を決めようとしている。史上最強かと言われるほど圧倒的な力を発揮しているにもかかわらず、その試合を満足に観戦することができないというアンバランスに陥っている。お粗末というか、情けないというか、すっかり笑えない話になっている。
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