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Jリーグ終盤の大一番で露わになった「仕切りの悪さ」 試合の残り時間がわからない (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【判定理由の説明があるかどうか】

 想起したのはその前日に行なわれたプレミアリーグ、ブライトン対サウサンプトン戦だ。1-1で迎えた後半22分、サウサンプトンの左ウイングバック、ライアン・フレーザー(スコットランド代表)が蹴った若干プラス気味のアーリークロスを、キャメロン・アーチャー(U-21スコットランド代表)がゴール前で合わせ、ネットを揺るがしたシーンである。

 このVAR判定も長考で、約5分半費やすことになった。クロスが送られた瞬間、MFアダム・アームストロング(元U-21イングランド代表)もゴール前に構えており、オフサイドポジションであることは明白だったが、焦点となったのはプレーに関与したか否か、だった。

 送られたボールが後方からのロブだった神戸に対し、サウサンプトンはサイドから。タテとヨコの違いはあるが、他者が関与しているか否かという点は同じだった。サウサンプトンの場合は「関与していない」から「関与した」に変更。得点は取り消された。

 ただし、Jリーグよりスッキリしているのは、判定の数分後、プレミアリーグからメディアにその理由が伝えられたことにある。日本で放送していた配信サービスはそれを入手。オフチューブで実況していたアナウンサーはその内容を、リプレイ動画を背景に代読していた。納得せずにはいられなかった。

 ブライトン対サウサンプトンも、アディショナルタイムが13分に及ぶ熱戦だった。結果も1-1で同じである。だが、柏対神戸戦とは試合後のスッキリ度が違っていた。安定感に大きな差を感じた。これを「プレミアリーグは世界最高峰だから」と、感心している場合ではない。いまやチャンピオンズリーグを含めて、これが欧州のスタンダードになりつつあることを忘れてはならない。

 結局、NHKの画面には最後の最後まで残り時間は表示されなかった。その向こうには何百万人の視聴者がいる。Jリーグ関係者及び審判団の手際の悪さを見過ごすわけにはいかない。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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