王者ヴィッセルが認めた町田ゼルビアの強さ 入念な対策によって弱点は見えたのか (2ページ目)
昨季王者が町田対策を入念にしてきたのは、開幕からのスタートダッシュに成功し、首位に立つほどの勢いがある町田は、対策もなしに「容易に勝てる相手ではない」という意識が強かったからだ。それに、自分たちと同じような特徴を持つチームゆえ、なおさら「負けられない」という王者のプライドもあったのだろう。
加えて、神戸は第6節でサガン鳥栖に引き分け、第7節で横浜F・マリノスに敗れ、ここを勝たなければ、ズルズルと順位を落としていきかねない状況にあった。上位争いに食らいついていくためには、何としても勝利を挙げる必要があった。
そうして神戸は、町田対策を見事に実践。オ・セフンに対しては常に誰かが競り合って自由にさせなかった。セカンドボールについても、山口蛍や扇原貴宏はもちろんのこと、山内翔や武藤嘉紀らも回収に参加。事後処理においては、チーム全体で抜かりなく行なった。
結果、町田にチャンスを作られるシーンもあったが、先制を許すことなく快勝。今後、町田と対戦するチームにとっては、大いに参考となる戦いぶりだったのではないか。
酒井も試合後、「狙いどおりに戦えた」と語る。
「町田が素早く縦に入れたり、ロングボールを蹴ってくる際に、DFラインとしては一度ラインアップして、相手FWをきってオフサイドを取る動きをやりたいと思っていました。それもできたし、対町田ということでは、トータルで見れば、自分たちのやりたいことができたかなと思います」
これまで町田と対戦してきたチームは、球際での激しさや粘り強さをはじめ、強度の高い守備に苦しめられてきた。しかし逆に、この日の神戸はその強さによって、自分たちの持ち味でもある守備の強度が引き出された格好となった。
現に山口は、「原点回帰になった」と言う。
「今日は、町田と戦えたことがよかった。ボールを保持するチームが相手だとやり方は変わってくるけど、町田は(自分たちと)同じようなスタイル。その分、セカンドボールの回収を含めて、球際で戦うとか、前に出る、後ろに戻る、ということを『より徹底してやろう』とみんなで話していたんです。
そして、今日は(みんなが)そこをサボらずにやってくれた。そうやって、自分たちのよさを出せた時は勝てる、というのが改めてわかった」
町田に勝つための戦略に特別なことはない。山口の言葉にもあるように、球際で激しく、運動量を落とさずに走り続けるという、サッカーの基本となるところで負けないこと。そこで勝負できなければ、いくら対策を立てても町田には勝てない――それを、神戸が示した。
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