なぜFC町田ゼルビアはJ1でも快進撃ができているのか 中途半端なチームは今後軒並み食われる可能性 (5ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

【対策されれば落ちていくか!?】

 当然、課題もある。3試合とも1得点で、複数得点が取れていない。フィニッシュの精度をもっと高めなければ、G大阪戦のように取りこぼす試合は出てくる。ただ、チャンス自体は作れているし、その数も多い。また、昨季18得点のエリキが復帰することで解決できる部分でもある。

 好調な町田を見て「今はよくても対策されれば落ちていく」と予想する人もいるだろう。しかし、町田こそ相手の対策を徹底してやりたいことをやらせず、自分たちのペースに引き摺り込むチームだ。

 町田がボールを持てば、ロングボールを入れてCKやスローインを取ろうとしてくるし(鹿島DF植田直通でもFWオ・セフンに手を焼いた)、相手がボールを持てば、よく訓練されたタイトな守備から鋭いカウンターを仕掛けてくる。

 これを上回るには、ロングボールを跳ね返し続け、強烈なプレスを回避できる質の高いビルドアップが求められる。あるいは前線の個によって優位を取るか。それができずに名古屋、鹿島は敗れ、G大阪も町田がひとり少なくなっていなければ、そうなっていたであろう内容だった。

 今後、まだチームを構築段階のクラブは、町田の一貫性あるスタイルに軒並み食われる可能性は高いだろう。逆にサンフレッチェ広島やヴィッセル神戸など、すでに完成度の高いサッカーをするチームを相手にした時、どんな戦いを見せるのかは興味深い。

 パリ五輪を目指すMF平河は、初のJ1で「今のところ壁はそこまで感じていない」という。この快進撃はどこまで続くのか。町田は、J1でも台風の目になろうとしている。

プロフィール

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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