新生・青森山田は「黒田スタイル」とはちょっと違う 象徴するゴールはカウンターから奪った3点目 (3ページ目)
【直近8大会で6度決勝に進出して4度の日本一】
28年間にわたって指揮を執り、3度の選手権制覇を成し遂げた黒田剛監督(現・FC町田ゼルビア監督)が突如退任したのは、前回大会前の2022年10月のこと。あとを引き継いだ正木監督の下、昨年大会ではベスト8で神村学園に敗れ、今年度のインターハイでも3回戦で敗退。プレミアリーグEASTを制し、サンフレッチェ広島ユースとのファイナルをモノにしたとはいえ、「高校サッカーの集大成」と言えるこの大会で勝つことが最大の目標だった。
「去年は無冠に終わってしまったなかで、もう1回、強い山田を取り戻そうという気持ちで1年間を過ごしてきました」(山本)
キャプテンの想いは、チーム全員の総意だろう。偉大なる監督のあとを引き継いだ正木監督にとっても、プレッシャーのかかる1年だったはずだ。
「とんでもない記録や結果を出してきた前監督から引き継いでのスタートでしたので、このような経験をしたことがある人っていうのも、全国でもあまりいないと思います。だから誰に相談するということもなく、ただ自分なりに監督と19年やってきていましたし、監督がいた時もいろいろなプレッシャーをかけられていましたので、それに比べればちょっと伸び伸びできた部分もありました」
そう笑いを誘った正木監督は「黒田前監督が作ってきてくれたベースがありますので、そこに自分は乗らせていただいているだけです」と謙遜もする。
しかし、選手たちは前体制との違いを感じ取っているようだった。米谷の言葉を借りれば「黒田監督は『1点取って1-0で勝つ』っていう方だったんですけど、正木監督は1点取っても2点、3点取りに行くというスタイル」ということである。
勝ち越しても攻め手を緩めず、カウンターから奪った3点目は、新星・青森山田を象徴するゴールとなった。
直近8大会で6度決勝に進出し、4度の日本一と、近年の高校サッカー界は青森山田によって支配されている。
「1回優勝したことによって、欲がもっと出てきそうなので、また来年からがんばりたいという気持ちでいっぱいです」
新たな野望を備えた新監督の下、青森山田時代は今後もしばらく続いていくかもしれない。
著者プロフィール
原山裕平 (はらやま・ゆうへい)
スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。
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