湘南ベルマーレのタリクが「もったいない」と感じている日本人選手たちの行動とは (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi

【何も意見しないのは本当にもったいない】

「僕が思うに、日本の社会では目上の人に意見をすることが、逆らっていると捉えられてしまうことがあるのだろう。だから、従順な人が多いのだと思う。内面に何かを抱えていたとしても、それを表に出す人は少ない。

 確かに監督はチームのボスであり、敬意を払うべき存在だ。あるいは僕もベテランだから、気を遣われているのかもしれない。でもだからといって頷くだけでは、チームが良くなるチャンスをみすみす逃しているようなものだ。

 いろんな意見が出てくれば、それを監督が吸い上げてより良い形にすることができると、僕は思うんだ。何も意見をしないのは、本当にもったいないよ。特にフットボールは、自由な選択のスポーツだからね」

 タリクは穏やかながら真剣な目をして続ける。

「この点について、僕は日本全体を変えることはできないと思うけれど、湘南のチームの空気は変えられたらいいと思ってきた。プロのフットボーラーなら、誰もがこのスポーツに対して意見を持っているはずだ。だからそれを内にとどめておかずに、仲間とシェアできるようになれば、このチームはもっともっと良くなっていくと思う。

 それは監督を助けることにもつながる。監督が言ったことだけでなく、自分たちで考えて別のやり方も身につけていれば、僕たちはさまざまな状況に対応できるようになるからね。うちの監督もきっと歓迎すると思うんだ」

 タリクは調和を好むが、それはまったく波風を立てないということではない。人々がそれぞれに異なる意見を述べ、チームや集団、社会にとって有益になりそうなことを採用していけば、きっとより良いものになっていくと信じているのだ。

 おそらくそれは、これまでにさまざまな文化や環境に触れてきたことにより、形作られてきた考えだろう。

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