サガン鳥栖指揮官「僕は運という言葉は使わない」 湘南戦大勝&上位浮上は「必然」だった (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【序盤戦と何が変わったのか】

 まさに戦術的優位が出たハットトリックだった。小野だけでなく、チームとしてのプレーに迷いがないのだ。

「開幕の時とは違うチームになっていますね。こうやって、こうしたら点をとれるという道筋が見えてきています」

 この日、先発で攻撃を引っ張ったMF堀米勇輝は嬉々として語っている。左足の技術は昔から天才的と言われていたが、それを最大限に引き出したのは鳥栖の構造だ。

「ルヴァン杯の(横浜F・)マリノス戦(6月18日)の前後で、細かいところを詰めてきました。ちょっとしたボールを止める位置、ボールを待つ位置とか。今は全員でイメージの共有ができています。湘南戦に向けては、3タッチの次にワンタッチ、ワンタッチはリターンなしで3人目が受ける、というボール回しを多くやった。すごく頭を使うんですが、今日の得点も練習(の成果)が出ましたね」

 その堀米が記録した4点目は、鳥栖の練習の丹念さを象徴していた。

 自陣でのスローインを堀米が下がって受け、左に展開してプレスを回避する。そこから左右中央と余念なくボールを動かし、相手のズレを作っていく。そして左利きMF手塚康平が一気に左へサイドチェンジし、岩崎悠人がボールを持つと、左利きサイドバックの菊地泰智が駆け上がる。同時にエリア内の人が動き、一瞬だけフリーになった堀米が左足で決めた。

 どこにボールを置いて、どのタイミングで、どれだけ人が動くか。その連動がすべてハマる、練習の成果だった。中でも、3人の左利きが起点的プレーヤーになっている点は興味深い。

 一方、完封した事実も特筆に値する。

「前半、潮目を変えるプレーができたのはよかったです」

 GK朴一圭は試合後に語ったが、それにとどまらない。鬼神のセービングで、5、6回はあったピンチをことごとく防いだ。右からのクロスに対して正面でボレーを打たれ、左からのクロスをヘディングで合わされ、ファーポストへのヘディングを逆サイドに打ち込まれたが......。

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