福田正博が振り返る2022年のJリーグ。目立った「育成型クラブの奮闘」と「全国のクラブ間の実力格差縮小」 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

選手育成に定評のあるクラブの頑張り

 サンフレッチェ広島は今季のリーグ戦で3位、天皇杯はPK戦で敗れたとはいえ準優勝し、ルヴァンカップでは優勝を勝ち取った。旋風を起こしたと言っていい。Jリーグには外国人監督が新たな価値観を持ち込むと、選手はほぼ変わらないのに見違えるサッカーを繰り広げるケースがある。今季の広島がまさにそれ。ミヒャエル・スキッベ監督の下で来季どこまで成長を遂げ、どんな結果を残すのかは楽しみなところだ。

 この広島にも言えることだが、選手の育成に定評があるチームというのは、主力選手が引き抜かれても、次から次へと新たな選手が頭角を現す傾向が強い。その代表例がサガン鳥栖だろう。

 昨シーズン7位と躍進を遂げたが、その選手たちのほとんどが他クラブに引き抜かれた。そのため今季の開幕前は「いよいよ降格もある」と見ていたのだが、蓋を開けてみれば11位。夏場までは上位をうかがう位置につけた。

 降格候補と目されながらも鳥栖が降格しないシーズンは、今季だけではなく、ここ数年続いている。背景には主力選手を引き抜かれてポジションが空くことを、選手育成のサイクルとして上手に活用しているように感じる。

 クラブやサポーターにとっては、手塩にかけて育てた選手をあっさり引き抜かれるジレンマがあると思うが、若い選手や他チームでくすぶっている選手にとってはポジションが空くことで出場機会を手にしやすいというメリットがある。

 若い選手が成長していくためには試合経験に優るものはない。どれだけ才能があろうとも選手層が厚いチームでは出場機会を手にできないことが多く、その結果伸び悩みにつながる。

 これを避けるためにレンタル移籍で成長を促したり、定期的に出場機会を与えたりすることが大事なのだが、鳥栖の場合は否応なく若い選手やユースで育てた選手を登用せざるを得ない状況になり、それが選手育成サイクルに好循環を生んでいるのだろう。

 ただし、これはクラブの育成組織が充実しているのが大前提だ。鳥栖や広島、柏レイソル、セレッソ大阪などのクラブは選手育成に定評がある。共通して言えるのはこれらのクラブは若い選手を登用しながらチーム力へと変えているということだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る