元レフェリー・家本政明が明かすJリーグですごかった担当試合。「胃がキリキリする緊張感」を感じた一戦とは?

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

元審判・家本政明が担当した忘れられない試合 レフェリー視点編

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昨年Jリーグのレフェリーを引退した家本政明さんに、ピッチ上のいちばん近い位置から見てきたなかで忘れられない担当試合を挙げてもらった。ここではレフェリーの立場としての緊張感や覚悟など、様々な思いがあって記憶に残っているゲームを教えてもらった。

◆ ◆ ◆

胃がキリキリするような独特の緊張感

2018年12月8日/J1参入プレーオフ決定戦 
ジュビロ磐田 2-0 東京ヴェルディ

 この試合は2008年以来、10年ぶりのJ1とJ2の入れ替え戦でした。それまでJ1昇格プレーオフのファイナルを担当したことはあったのですが、それはあくまでもJ2同士の対戦で、ゴーイングアップのトーナメントに近い試合です。

家本氏が「独特の緊張感を感じた」という2018年のJ1参入プレーオフ決定戦家本氏が「独特の緊張感を感じた」という2018年のJ1参入プレーオフ決定戦この記事に関連する写真を見る でもこの参入プレーオフは生きるか死ぬか非常にデリケートで、どうにも例えようのない独特な空気感、緊張感に包まれた試合でした。翌年の参入プレーオフも担当させていただいたんですが、やはり10年ぶりというのもあって、この試合のメディアやサポーターの注目度は非常に高く、普段とは違う緊張感を持ってスタジアムに向かったのを覚えています。

 私の戦前の印象では、東京ヴェルディのほうが有利だろうと予想していました。そう思う理由はいくつかありました。1つはプレーオフでのミゲル・アンヘル・ロティーナ監督のサッカーが非常によかったこと。もう1つは、こうした短期決戦は勢いに乗ったチームが強いのが常であること。

 さらには、磐田の引き分け以上で残留というレギュレーション。東京Vは勝つしかないと心理的にシンプルなのに対し、磐田の引き分けでもいい条件から来るゆとりみたいなものが、逆にプレッシャーになるとも思っていました。

 それから、このシーズンは磐田自身が苦しんだ末にプレーオフに回っていた点。以上のことから東京Vに流れはあるなと思っていました。

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