FC東京が見せたのは旧スタイルの「らしさ」。「完成度はまだ20%にも満たない」新スタイルはどう変貌するか (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 加えて18歳のルーキー、MF松木玖生がいきなりの先発出場でJリーグデビューしたことも、新シーズンの開幕にあたってはポジティブな話題となった。自ら際どいミドルシュートを放っただけでなく、タイミングのいい飛び出しでパスを受け、ディエゴ・オリヴェイラのシュートにつなげるなど、チャンスメイクにおいても十分な働きを見せていた。

「2連覇中のチャンピオンを相手に、アウェーでここまでしっかり試合を支配できたことに、選手を誇りに思う」

 今季からFC東京の指揮を執るアルベル・プッチ・オルトネダ監督が試合後、満足そうに話していたのもうなずける。

 とはいえ、この試合で見られた"FC東京らしさ"とは、いわば、昨季までの文脈に沿ったものだ。今季新たにスペイン人指揮官が就任したFC東京に期待されているものとは、おそらく別物だったはずである。

「自分たちのチームがしっかりスタイルを貫いていいプレーをすれば、相手の影響は受けない」

 そう語るアルベル監督が昨季まで率いたアルビレックス新潟のスタイル――徹底してボールを保持して主導権を握り、ゲームを支配する――を見れば、彼がどんなサッカーを志向しているかは明らか。だとすると、本来目指している"らしさ"が、この試合で表れていたとは言い難い。

 それなりにボールを保持して攻撃を組み立てようという意図は見えたものの、前線の個人能力を生かした(に頼った)チャンスメイクは、どちらかと言えば、昨季までのスタイルに沿ったものである。

 この試合で得た、最大の決定機が象徴的だ。

 川崎に自陣深くまで押し込まれた状況から、DF渡邊凌磨が前線に大きくクリア。そのボールはディエゴ・オリヴェイラの頭にわずかにかすっただけだったが、幸いにも前方に流れたところをレアンドロが拾って抜け出し、GKとの1対1に持ち込んだ。一瞬にして攻守が入れ替わる鮮やかなカウンターではあったが、狙った形というより、多分に偶発的要素が含まれていた。

 ディエゴ・オリヴェイラとレアンドロの能力はJ1屈指であり、それをシンプルに生かした攻撃は効率がいいし、得点を増やすための策として理に適っている。目指すスタイルとは逆行するとしても、主力選手のほとんどが昨季から変わらない以上、そうならざるを得ない側面があるのかもしれない。

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