「一番の武器はメンタル」青森山田の10番、松木玖生。Jリーグでも抜群の存在感を発揮できるか (3ページ目)

  • 松尾祐希●文 text by Matsuo Yuki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

【欧州で自分を見つめ直す】

 決意を持って青森にやって来て6年目。思い返せば、他の追随を許さない強烈なメンタルの強さで、口にしたことはすべて実行に移し、結果に結びつけてきた。しかし、高校入学後に掴んだタイトルは、1年次のプレミアリーグのみ。この時点で選手としては高校レベルの域を超えていたが、松木は現状に納得できなかった。

 だからこそ、さらなる成長を目指して渡欧した。昨年2月にはフランス1部リヨンのU-19チームで練習を積み、世界の基準に照らし合わせて自分に足りていないモノを洗い直した。

 スプリント力やプレー強度の不足を痛感し、イチから鍛えることを決意。自分に甘えず、妥協は一切しない。そうしたスタンスで練習に取り組みながら、キャプテンとしての役割も全うした。プレミアリーグでは圧倒的なプレーでチームの勝利に貢献し、Jクラブの育成組織を抑えてリーグ新記録となる開幕7連勝を収めた。

 そして迎えた、夏のインターハイ。打倒・青森山田で立ち向かってくるライバルたちをはね除け、得点王を獲得すると同時に高校入学後初となる日本一を手にした。決勝後には、うれしさのあまりピッチの上で人目をはばからずに号泣。誰よりも努力を続けてきたからこそ、涙が止まらなかった。

 以降も全速力で駆け抜け、10月下旬には飛び級でU-22日本代表に追加招集され、U-23アジアカップ予選に参戦。初めて国際舞台を戦ったが、動じることはなかった。

「日の丸を背負う意味は日本を代表すること。勝たないといけないし、気持ちの面でも追加招集で参加したとしても、『こいつじゃぜんぜんダメだな』と思われないようにしないといけない」

 カンボジアとの初戦では嫌なムードを断ちきる先制点を決めるなど、青森山田でプレーする時と変わらず、大舞台に強い松木を見せつけた。

 6年間のラストイヤーを飾る年に相応しい結果を残し、残すは最後の選手権のみ。順調に勝ち上がり、あと2つ勝てば日本一というところまで登ってきた。

 昨年の選手権で感じていたストレスもなく、チームのために戦いながら思いきったプレーで結果を残している。

「割りきってプレーできている。自分にとってもすごくやりやすい攻撃的なサッカーで、(チームのシステムが昨年とは違って)2トップになり、自分も(より攻撃に)関われるようなポジショニングになっている。もっとゴールに向かっていきたい」

 松木の言葉からは手応えと自信が滲み出る。当たり負けしないフィジカルの強さ、正確な左足のキック、3列目から一気に飛び込んでいく圧倒的なスプリント力はもちろん、守備でも強度の高いプレーで、相手につけ入る隙を与えない。

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