奇抜なセットプレーの本家が高川学園の「トルメンタ」の利点を解説。「人間の習性をうまく利用できている」
【「トルメンタ(嵐)」と発表】
大会直前に左ヒザを負傷し、欠場を余儀なくされた高川学園(山口県)DF奥野奨太主将による選手宣誓で幕を開けた、第100回の高校サッカー選手権大会。「奥野を国立のベンチに」を合言葉にトーナメントを勝ち上がる高川学園は、2007年以来14年ぶりとなるベスト4進出を果たし大会に嵐を巻き起こしている。
高川学園のグルグル円陣セットプレー「トルメンタ」この記事に関連する写真を見る 今年の代は、Jクラブの練習参加を経験したMF林晴己を筆頭に、各ポジションに昨年度の選手権を知る選手が揃い、戦力は充実している。新チームが発足した直後の2021年3月に行なわれた中国新人大会では、2年連続での優勝を果たすなど関係者の間での評判は高かった。
チームの代名詞である粘り強い守備と、アグレッシブにゴールへと迫る攻撃と共に、今回の選手権での勝ち上がりを支えているのは、選手自身が編み出したというトリックセットプレーだ。
初披露は1回戦の星稜(石川県)戦。前半8分にペナルティーエリア(PA)の右外でFKを獲得すると、PA内で待ち構える6人が手をつないで円となり、グルグルと回り始めた。これまで見たこともない奇策に戸惑う相手DFをしり目に、クロスが上がった瞬間に一斉に散らばると、ノーマークだった林が頭で合わせ、先制点を叩き込んだ。
このプレー動画がSNSにアップされると、アメリカのスポーツ専門チャンネル「ESPN」にも取り上げられるなど拡散。海外でも話題になった。
2回戦の岡山学芸館(岡山県)戦では、変形バージョンを披露する。後半20分に相手エリア左でFKを得ると、PA内で3人組が2つの輪を作りグルグルと回転。1本目のクロスからは得点が生まれなかったが、こぼれ球をうまくつないでFW中山桂吾が得点した。当初はメディアの間で"グルグル円陣"などと呼ばれていたが、試合後にはサッカー部の公式Twitterで、スペイン語で嵐を意味する「トルメンタ」と発表した。
1 / 3