高卒がいい? 大学経由がいい? 福田正博が説くプロサッカー選手のキャリア形成の考え方 (2ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

 その試合も練習試合では意味が半減する。緊張感のある公式戦を数多く経験することが伸び盛りの年代には必要だ。また、試合に出られなくても、高いレベルのチームで練習をしていれば成長すると思われているが、目的のない練習ほど身にならないものはない。

 2020年に大卒1年目のシーズンを送った選手たちを見ると、三笘薫(川崎フロンターレ→サン=ジロワーズ)、旗手怜央(川崎)、林大地(サガン鳥栖→シント=トロイデン)、金子拓郎、高峰朋樹、田中駿汰(以上コンサドーレ札幌)などは、大学でタイトルのかかった真剣勝負を経験しながら実力を伸ばし、プロ入り1年目から活躍する土台を築いた。

 昨シーズンほど多くはないが、今シーズンも大卒ルーキーは躍動している。札幌の小柏剛は1トップのスタメンに定着。川崎の橘田健人も今季後半戦からアンカーのポジションを掴み取った。当然個人差と所属クラブによる違いはあるが、大卒ルーキーのほうがプロ入り後すぐに活躍しているように見える。

 そして、三笘や林が道を切り開いたように、大学経由でプロ入りした選手であっても、活躍さえすれば海外移籍も可能な時代になっている。

<J2からの個人昇格狙いもひとつの手>

 もちろん、高校卒業でプロ入りした成功例も少なくない。東福岡高校から鹿島アントラーズに入団して今季が2年目の荒木遼太郎は、昨季はリーグ戦26試合に出場し、今季も現在35試合に出場して10得点を挙げている。

 ただし、荒木もアンダー年代の日本代表で主力を務めていた実績がある、世代トップの逸材だ。しかも、高卒選手の育成に定評のある鹿島に進んだ点を見落としてはいけない。

 子どもの頃からプロサッカー選手を夢見てきた選手たちにとって、高校卒業を前にしてプロクラブから声がかかれば、入団に気持ちが傾くのも当然だ。だが、本当に大切なのは『プロ選手になる』ではなく、『プロとして試合に出る』こと。そこを見誤ってもらいたくないと思う。

 重要なのはどのクラブを選ぶかだ。特に高卒からJクラブに進もうとする場合、入団するクラブによってその後のキャリアは大きく変わる点を意識しておいてほしい。

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