「遠藤保仁がいなければ、このサッカーはできなかった」。ジュビロ磐田がJ1昇格を果たした3つの理由 (5ページ目)

  • 望月文夫●文 text by Mochizuki Fumio
  • photo by AFLO

 遠藤はそこから7戦連続で欠場したが、他の選手たちの踏ん張りで5勝1分1敗と周囲の予想を超える成績で乗り切り、チームは順調に順位を上げた。そして先発で復活した第14節群馬戦では、自身の24年連続得点となる決勝弾を決め、今季2度目の完封勝利で完全復活を印象づけた。

「ここまでもこれからも支えてくれる皆さんのために、どんどん伸ばしていければと思う」

 衰え知らずのベテランが、さらなる記録更新に意欲を覗かせた。

 第11節以降の29戦でわずかに1敗。この14節にはすでに負けない磐田として走り出していたわけだが、この後もピンチは訪れる。DF伊藤洋輝の海外移籍や主力組の相次ぐケガなどで、守備のバランスが崩れたことが要因か、失点が増え第22節から3戦連続勝ちなしと失速したのだ。しかし遠藤は第25節から2戦連続ゴールでチームを再び上昇へ導く。そして16戦連続負けなしとクラブ記録を更新したままJ1昇格を達成した。

 昨年よりもはるかにスムーズなサッカーを展開し、鈴木監督が理想としてきた「ボールをつないで相手を動かし、そこからチャンスメイクして仕掛けて勝つ」というサッカーは成熟期を迎えたが、そこに不可欠な存在がいうまでもなく遠藤だったのだ。

「おそらく遠藤がいなければ、このサッカーはできなかった。遠藤がチームに加わった頃、磐田の選手たちは相手のプレスに怖がって簡単に蹴りだすだけだった。それが今では最終ラインからしっかりとボールをつなぐことができるようになった。ビルドアップのレベルも間違いなく上がっている」

 そして遠藤は昇格を決めた試合のあと、目標達成できた理由とチームの後輩選手の成長ぶりをこう表現している。

「慌てずに90分間プレーできるようになった。とくに負けているときに多かった雑なプレーも少なくなった。どう試合を進めたらいいのかも、いまは全員が共有できている」

 昨年10月の加入から1年1カ月。チームを常勝軍団へと成長させた遠藤の功績は大きい。

 名門磐田は昇格という最大の目標を達成したが、もう一つ大きなミッションがある。J2優勝である。3季ぶりに復帰するJ1の舞台で対等に、いやそれ以上の戦いを演じるためにも、タイトルを引っ提げて挑むことが最低条件だ。

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