「遠藤保仁がいなければ、このサッカーはできなかった」。ジュビロ磐田がJ1昇格を果たした3つの理由 (2ページ目)

  • 望月文夫●文 text by Mochizuki Fumio
  • photo by AFLO

 小野社長は「選手たちの能力を引き出すには、名前や実績、マインドや熱さを持った指導者が必要だ」と中山コーチの必要性を強調。鈴木監督も「選手にはいかにいい準備といい刺激を与えられるか。メンタルの強化や課題だった得点力アップにつなげたい」と、現役時代にがむしゃらプレーでゴールに向かい、得点王の実績もある新コーチに大きな期待を寄せた。

 中山コーチのキャラクターもチームに好影響を与える。1年での昇格を逃し沈みかけた雰囲気は、今季始動時から一気に改善された。そして全体練習後のシュート練習では、ゴールを奪う姿勢や動きの迫力など、ゴン魂を徹底的に植えつけた。

 成果はてきめんだった。昨年全42節で奪った58得点は、今季はわずか33節でクリア。第13節秋田戦から始まった連続ゴールは、昇格を決めた水戸戦まで27試合と伸ばし、ここまでリーグ最多71得点を誇る屈指の破壊力を身につけていた。

 そして鈴木監督の名将ぶりも昇格を加速させた。ブレない方向性を掲げ、好調を維持しても満足せずに、常に改善という言葉を口にした。といって、選手に威圧感は与えてはいない。主将のDF大井健太郎は「年齢の高い選手が多いこともあるが、自由にやらせてくれる。選手との信頼関係もあるので、監督のためにも、という気持ちでピッチに向かう選手も多い」と話し、和かムードで選手をけん引してきた。

 選手時代から長いつき合いの服部コーチも「厳しさもあるが怒鳴ることもなく、何ともいえないいい雰囲気をつくってくれる」と絶大な信頼を置く。その鈴木監督が10月下旬に体調を崩して入院すると、代行として指揮を執り「心がけたことは、監督がつくったいい流れを止めないこと。特別なことはしないで、これまでの雰囲気を変えないことだった」と話し、指揮を引継いでから4戦全勝で昇格に導いた。

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