「デュエル勝利数=最強」ではない? サッカーのデータは背景を知ってからが面白い

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

福田正博 フットボール原論

■「デュエル勝利数」「スプリント回数」など、最近のサッカーの試合では、以前とは比べ物にならないくらいたくさんのデータが提示され、それを楽しむことができる。ただ、数字の良さやランキングの上位が、そのまま内容の良さとは限らないのが難しいところだ。どの数字も「そのデータの背景を知るのが大切」と、福田正博氏は指摘する。

今季もブンデスリーガのデュエル勝利数で上位に入る遠藤航今季もブンデスリーガのデュエル勝利数で上位に入る遠藤航この記事に関連する写真を見る サッカーがデータで語られる時代になっている。ボール支配率やパス・シュートの本数など従来からあるスタッツに加え、最近では選手の走った経路やスピードなどを記録したトラッキングデータを使って数値化される項目もある。

 そうやって取得された大量のデータを分析し、浮き彫りになった事象をチーム戦略やトレーニングに落とし込んだり、選手評価に活用したりしている。

 自分がいま現役選手だったら、大変だったろうなと思う。サボらずにちゃんと走っているかどうかは走行距離などのデータで一目瞭然。FWなら「来たるシュートチャンスのために」と手を抜きがちな守備でのチェイスも、スプリント数などの目に見える形で浮き彫りになってしまう。

 一方で、さまざまなデータがあることで、サッカー観戦の楽しみ方は増えたと思う。試合を見ながら「あの選手はいつもより動いていない気がする」と感じたら、データをチェックすれば、選手を見て感じたものが正しかったかがわかる。

 そうしたことが積み重なっていけば、選手やサッカーを見る目が養われ、またサッカー観戦が楽しくなっていくだろう。奥深いところに踏み込むには敷居の高さを感じるサッカーの複雑な面も、データを見比べたりすると入りやすくなるのではないかと思う。

 ただし、注意しなければいけない点もある。データが示す数値は、あくまでデータ採取の指針に則った数値にすぎないということだ。

 たとえば、いま日本代表の遠藤航の代名詞のように使われている『デュエル』。ハリルホジッチ元日本代表監督時代に日本選手のウィークと指摘されて広く知られるようになった『球際での競り合いの勝負』だが、このデュエル勝利数で遠藤航は昨季のブンデスリーガで1位となった。

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