日本代表に必要なスピード系ウイング。前田大然は神出鬼没で「滑らかさ」がある (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 松岡健三郎●写真 photo by Matsuoka Kenzaburou

 現在の日本代表級選手で、スピードという魅力を備えている選手と言えば伊東純也、浅野拓磨、そして古橋亨梧になる。この中でウイングとしての適性があるのは伊東、古橋。彼らはそれでいながら、高い得点力もある。前田も同タイプだ。

 横浜FMのサッカーを見ていると、日本代表でも左右のウイングにスピード系を配したサッカーが見たくなる。久保、堂安に代表される技巧派ウイングも捨てがたいが、東京五輪でさんざん見させられた分、横浜FM的なサッカーに新鮮味を覚える。

 もちろん、そこで問われるのはバランスである。多彩さと言ってもいい。23人のメンバーの中にさまざまな要素をどうやって盛り込むか。相手によって、時間帯によって、選手を代え、攻撃に変化をつけられるか。日本の浮沈のカギを握るポイントといっても言いすぎではない。

 バランス論で言えば、日本に決定的に欠けている要素は高さだ。他の国にあって日本にないものである。W杯本大会では毎度、出場32カ国中、最も低身長国のひとつとなる日本は、そこで技術に活路を求めようとした。かつての小野伸二、現在の久保建英は、その産物と言うべき選手である。

 一方で、追求し損ねてきたのがスピードだ。ある時まで、速すぎる選手は技術的には劣ると相場が決まっていた。魅力的に映らない。あるいは、評価されにくい傾向があった。スピード系の好選手が誕生する土壌がなかったのだ。前田のようなスピードスターは、20年前には存在しなかったタイプ。岡野雅行がせいぜいだった。

 前田の身長は173センチと高くない。伊東(176センチ)、古橋(170センチ)、浅野(173センチ)も同様だ。仲川に至っては161センチしかない。低身長国日本の選択肢として、「巧い」に加え、「速い」もあることが、彼らによって実証されている。遅まきながら獲得した日本のアドバンテージを、ピッチにどう反映させるか。その答えを見るようなサッカーを展開しているのが、横浜FMであり、前田になる。

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