川崎フロンターレで唯一欠かせない存在。田中碧が持つ特殊能力とは?
5月16日、等々力。首位の川崎フロンターレは本拠地に北海道コンサドーレ札幌を迎えたが、前半は苦戦していた。ボールをつなげることができず、リズムを出せない。絶対王者らしさはなかった。
「裏を狙え」
試合前、ベンチからそう指示があったとはいえ、単に蹴り出すだけ。いたずらにボールを失っていた。
札幌は、前から人に強く当たるディフェンスを敢行し、中盤まで容易にボールを運ばせなかった。長いボールを跳ね返し、セカンドボールを回収。何より、鍛え上げられたパス回しは、川崎のお株を奪っていた。プレッシングと切り替え、そしてポゼッションは「川崎攻略のカギ」だが、札幌は実に的を射た戦いで優位に立った。
スコアレスで前半を折り返した川崎は、後半からMF田中碧を投入している。これでプレーテンポが劇的に変わった。善戦していた札幌を押し込んだ。
後半4分、札幌のGKのロングパスを、田中は右サイドで距離をつめて奪う。いったんボールはこぼれたが、再び奪い返した。そこで、すかさず左足で縦パスを入れ、レアンドロ・ダミアンにつなげる。この瞬間、中盤の裏に起点を作った。これで守る側を追い込んで、展開されたボールからのクロスを三笘薫が決めた。
田中の真の値打ちとは?
コンサドーレ札幌戦に後半から出場、2点にからむ活躍を見せた田中碧(川崎フロンターレ) 川崎はJリーグで、際だった戦力を誇っている。リーグベストイレブンの半数以上が、川崎の選手とならざるを得ないほどだ。控えのレベルも高く、5人選手交代の恩恵を最も受けているチームだ
しかし、その中でも田中は欠かせない。
注目を集める三笘は、相手に最大のダメージを与えられる選手である。重いハンマーであり、鋭い槍であり、火を噴く大砲と言える。一騎駆けで、大軍に打撃を加えられるアタッカーとして頼もしい。
だが、戦術的チームプレーヤーとしては、田中は特別な存在だ。
田中は周りを輝かせる。適切なポジショニング、判断、プレー精度で味方に攻守両面のアドバンテージを与えられる。それがチーム全体のクオリティを高め、試合の流れを改善させるのだ。
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