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スペインメディアも祝福。イニエスタはこの2年で神戸に何をもたらすか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 まず、クラブ史上初のタイトル獲得に貢献した。2019年シーズン、天皇杯を勝ち上がり、元旦に優勝を勝ち取った。さらに2020年のゼロックススーパーカップでも、横浜F・マリノスを破って、二つ目のタイトルを手にした。そして同年、クラブ史上初の出場となったアジアチャンピオンズリーグ(以下ACL)では、八面六臂の活躍で準々決勝進出に大きく貢献している。

 平たく言えば、イニエスタは神戸の歴史を変えた。

「イニエスタとプレーしたい」

 そう願うJリーガーは多い。それは敵であっても、刺激を受けられるからだろう。チームメイトにとって、開明的な存在であることは言うまでもない。

 実際、古橋亨梧は著しいスピードで成長を見せている。イニエスタを信じて走り続けることで、正しいタイミングがつかめるようになった。そして最善のパスをもらえることによってゴールの必然性は増し、得点を重ねることでシューターとして成熟した。

 神戸の選手全体に、イニエスタの神がかった輝きが施されている。

「アジア制覇」

 それはお題目に過ぎなかったが、イニエスタがいることで現実味が増した。ディフェンスは落ち着いてパスをつけられるし、中盤やサイドの選手は余裕をもってボールを受けられる。適切なプレーを日々、すり込まれる。その効果は絶大だ。

「アンドレスがいれば、得点を取るのは簡単だ。完璧なタイミングでパスが出てくるからね。彼は周りの選手を輝かせる」

 バルセロナ時代、リーガ・エスパニョーラ得点王に輝いたサミュエル・エトーはそう語っていたが、同じ現象が神戸で起きているのだ。

 イニエスタは神戸で、一選手以上の存在だろう。これだけの経歴を持つ実力者がJリーグでプレーしたことは、過去に一度もない。すでに全盛期は過ぎているとは言え、圧倒的なプレーレベルだ。

◆イニエスタ「自分はイチ選手ではない」。ケガの重症化を覚悟してPKに臨んだ

 であるにもかかわらず、少しも驕るところがない。真摯にプレーに集中し、昨シーズンのACLではケガを押してのプレーで最後まで戦い続けた、その気力は常勝の覚悟と同義だった。それはプロ選手として進むべき道標だ。

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