高校サッカー優勝の山梨学院、指揮官が練った2つの青森山田対策

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 仲間を鼓舞する大声援もなければ、ブラスバンドの重厚なサウンドも存在しない。しかし、代わりに埼玉スタジアムに響き渡ったのは、ただ勝利だけを求めた高校生たちの熱い想いである。

 激しく攻守が入れ替わり、絶対に譲らないという球際のバトルにも胸を熱くした。お互いにミスが少なく、技術の高さも十分に備わっていた。そして何より、誰もがチームのためにサボることなく走り続け、勝利のためにすべての力を注ぎこむ団結力があった。

山梨学院と青森山田の決勝戦は心震わせる試合だった山梨学院と青森山田の決勝戦は心震わせる試合だった コロナ禍の中で行なわれた全国高校サッカー選手権の決勝は、すべての高校生の想いを代弁するかのような、感動的な一戦だった。

 ファイナルまでの戦いを振り返れば、青森山田(青森)が優位と見られていただろう。決勝までの4試合で15得点・2失点。準決勝では矢板中央を5−0で下しており、いい形でこの決勝を迎えていた。

 対する山梨学院(山梨)は、5試合で6得点・3失点。うち3つが1−0で、2つがPK勝ち。まさに薄氷の勝ち上がりだった。

「我々のほうがスキルでは上回っていたかもしれない」

 青森山田の黒田剛監督が振り返ったように、多くの時間帯でボールを支配したのは、青森山田のほうだった。24対7というシュート数も、指揮官の言葉を裏づける。

 しかし、勝ったのは山梨学院だった。先制し、逆転を許しながらも、執念で追いつき、PK戦に持ち込んで、これをモノにした。

 では、なぜ実力的に劣ると見られていた山梨学院が栄光を掴むことができたのか。そこには2つの秘策があった。

 ひとつは青森山田のCB、藤原優大にマンマークをつけるというもの。浦和レッズ入りが内定している世代屈指のDFは、対人プレーの強さのみならず、正確なフィードで攻撃のスイッチを入れる。この起点を封じることが、山梨学院の最初の狙いだった。

「10回戦って、1回か2回勝てればいいという相手なので、その1回が今日来るようにどう戦っていくかを準備して臨みました」

 山梨学院の長谷川大監督は、"藤原封じ"について、次のように説明した。

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