2020.04.07
すべてはジーコから始まった。
衝撃のJリーグ開幕戦ハットトリック

- 渡辺達也●文 text by Watanabe Tatsuya
- 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio
この年、ジーコは例年よりも2カ月早い1月中旬に来日。開幕戦に向けてコンディションを整えてきた。日本サッカー界にとって歴史的な日のために準備してきた結果である。
鹿島はその勢いのまま、第1ステージ優勝を飾った。チャンピオンシップではヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)に敗れたものの、人口わずか4万5000人(当時)の小さな街をサッカータウンに変えたのは、間違いなくジーコだった。
ジーコがJリーグでプレーしたのは、この年と翌年の6月までの1シーズン半だけだった。23試合出場、14得点。この記録を上回る外国人選手はたくさんいる。しかし、住友金属時代からクラブに伝え、残してきたものの大きさは計り知れないものがある。
27年経って、鹿島は「常勝軍団」と呼ばれ、選手たちも「鹿島でプレーすることはタイトルを獲ること」と言い切る。今もなおジーコイズムが受け継がれている証拠だろう。
Jリーグが成功した要因のひとつに、小さな街に誕生した鹿島アントラーズというクラブの存在があるのは事実だ。リーグ最強クラブに成長したその歴史は、プロサッカークラブを作るためのモデルにもなるだろう。その土台づくりに貢献したジーコは、今も鹿島のテクニカルディレクターとしてチームを支えている。