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「サッカーそのもの」――イニエスタが
Jリーグでプレーしている幸せ

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

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アンドレス・イニエスタ(ヴィッセル神戸/MF)

 2019年8月23日、J1第24節のサガン鳥栖vsヴィッセル神戸。アンドレス・イニエスタは"本気のプレー"を見せている。

 鳥栖に所属するスペインの盟友、フェルナンド・トーレスが現役最後に選んだ試合だった。スペイン代表で、ユーロやW杯をともに戦った友に対する餞(はなむけ)だったのか、全身全霊をかけて挑んだ。

 イニエスタの真剣プレーは別境地だった。

 たとえば、後ろ向きで受けたパスに、背後からインターセプトを狙われているのを察知。即座に右足の裏を使ってボールをひいて、プレスを無力にした。天から俯瞰しているような動きは、変幻自在だった。鳥栖の選手が体に触れられないほどの差だ。

 前半22分の、神戸の3点目は、伝説的と言える。

 イニエスタは、自陣で浮いたボールをパスしたあと、戻ってきたボールを再びダイレクトのボレーでロングパス。右サイドを駆け上がっていたFW古橋亨梧に、ミリ単位で合わせている。余裕を持って攻めることができた古橋は、FW田中順也にボールを渡し、ゴールが決まった。

 イニエスタの優れたビジョンとテクニックが集約され、そのゴールは芸術の域に達していた。

 結局、イニエスタは前半終了間際に筋肉系の故障で、ピッチを去っている。全力でのプレー時間は限られる。年齢的に若くないし、慢性的な故障も抱える。

 しかし、彼のプレーは依然として特別だ。

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