2020.01.13

サッカー王国復権へ。静岡学園は
勇敢な「伝統のスタイル」を貫く

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 正真正銘のラストプレーだった。

 スコアが動かないまま迎えた90+4分、静岡学園(静岡県)の10番、松村優太が自ら得たPKを「自分の信じた方向に」蹴り込むと、緑のユニフォームがついに歓喜の瞬間を迎える。直後にタイムアップの笛が鳴り、堅牢を築いた赤のユニフォームはがっくりと肩を落とし、涙にくれた。

松村優太のPKゴールで決勝進出を決めた静岡学園 究極の”矛盾対決”だった。矢板中央(栃木県)とすれば、いかに守り続けるか。静岡学園にとってはいかにそれをこじ開けるのか——。90分にわたって、その構図が崩れることはなかった。

 プランどおりに試合を進めていたのは、矢板中央のほうだっただろう。人数をかけて自陣を固め、一発のフィードで相手の隙を狙う。時に11人がエリア内に戻り、静岡学園の猛攻をしのぎ続けた。

 一方の静岡学園も、自らの戦い方を徹底した。

 個人の技術を重視した伝統の”静学スタイル”で、幾重にも張られた矢板中央の守備網をこじ開けようと試みる。何度も仕掛けては跳ね返され、シュートを放ってもGKに届く前にDFにブロックされてしまう。押し込んでいるようで、崩しきるには至らない。そんなシーンがまるでリプレイのように、延々と繰り返された。

「打てる時は打っていこうと。いい状態では打たせてくれませんでしたが、相手がエリア内で引いていたので、どんどん打っていこうという意識でした」

 エースの松村はそう振り返る。仕掛けては、シュートに持ち込み、跳ね返されてもめげることなく、再びドリブルで敵陣へと切れ込んでいく。

 記者席から見ていると、「パスを出せばいいのに」「持ちすぎだなあ」と思う時もなかったわけではないが、ドリブルに絶対的な自信を持つ彼らの選択こそが、静学流では正解なのだ。守りを固める矢板中央の徹底ぶりも驚きだったが、赤い壁に何度も挑み続ける静岡学園の勇敢なスタイルもまた、称賛に値した。

「穴がなかったですね」

 川口修監督は、矢板中央の堅守に舌を巻いた。