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J1昇格を逃すも胸を張る。
徳島ヴォルティスは何をつかみ取ったのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

 攻め続けていた"見返り"だろう。20分、右サイドを深く入り込み、田向泰輝が中に蹴り込む。ブロックされたあとに野村が再びクロス。これがCKになると、野村がファーに蹴ったボールを石井秀典が折り返し、鈴木徳真が押し込んだ。

 前半、徳島は5本ものCKを獲得している。両サイドから万力のように押し込み、もう1点を取れるチャンスもあった。ボールプレーでイニシアチブを握っていた。しかし、ボールは持ったものの、ゴールまで雪崩れ込むことはできなかった。

「1点リードして、もう1点というところで。ゴール前の五分五分のボールが、相手のものになっていた。2点目を決めきれなかった」(徳島・鈴木)

 そして後半、湘南がJ1の底力を見せるように流れを押し戻す。ブラジル人FWクリスランが入ったのは大きかった。ラインを下げ、マークを集中させ、ボランチの齊藤未月が息を吹き返した。左サイドの鈴木冬一も出色のキープ力で、局面の勝利でダメージを与えていた。

 徳島は後手に回った。5-4-1のような陣形になる時間が多くなり、差し込まれる。ロドリゲス監督は攻撃に転じる選手交代を試みたが、状況はむしろ悪化した。64分、右サイドで鈴木にマークをはがされ、右サイドにボールを通されると、DFヨルディ・バイスが引っ張られる。折り返されたボールをクリスランにスルーされ、後方から突っ込んできた松田天馬に流し込まれた。

「後半は、自分がいる右から攻撃を作れなくなっていた。ボールを持てなくなって......。湘南のFWはJ2と比べてパワーもあって、難しい局面になると思っていただけに......」(徳島・田向泰輝)

 勝たなければ昇格はない徳島は攻めに転じたが、パワーは残っていなかった。J1を戦ってきた選手を凌駕する勢いはない。残り10分を過ぎると、長身DFバイスを前線に上げ、パワープレーを選択。左サイドからのクロスをバイスがボレーで合わせ、相手DFの手に当たったかに見えたが、笛はならなかった。終了間際にも鈴木が渾身のミドルを放つも、無情にもサイドネットを叩いた。

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